夏に入ってもトランプ大統領の勢いは緩まることなく、ワシントンの政治は休みなしの状況が続いている。7月4日の独立記念日には大型減税や歳出削減、債務上限の引き上げなどを盛り込んだ「大きく美しい1つの法案(OBBBA)」が成立、8月にかけては各国との通商合意が相次いで発表された。外交では6ヵ月で6つの戦争を止めたと主張、ロシア・ウクライナ戦争の仲裁に向けて4年ぶりに米ロ首脳会談を実施するなど、積極的に行動している。景気は転換点を迎えつつある兆候が見られる中、トランプ大統領は統計の正確性の疑義を訴え雇用統計を所管する労働統計局(BLS)の局長を解任、利下げ主張に応じない連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対する圧力も強めている。
来年の中間選挙を意識した動きも目立ち始めた。注目を浴びているのがテキサス州だ。7月30日に発表された同州の新しい選挙区の区割り案では、連邦議会の下院の選挙区を共和党に有利な形で書き換える計画が明らかになった。現在の連邦下院の勢力図は435議席のうち、共和党が219、民主党が212と僅差であり、中間選挙の結果次第では民主党が過半数を獲得する可能性があり、その場合にはトランプ政権の政策に急ブレーキがかかるだけでなく、政権運営に対する監督強化や説明責任が求められるのは目に見えている。テキサス州に配分されている連邦下院の議席数38のうち、共和党は25議席を獲得しているが、新たな区割り案では更に5議席を上積みできる可能性がある。いわゆる、ゲリマンダー(有利になるように選挙区をいびつな形にすること。1812年にマサチューセッツ州のゲリー知事が選挙区をサラマンダー(山椒魚)のように変更したことから名づけられた)を利用して選挙前に少しでも有利な状況を作り出す狙いだ。
テキサス州議会の民主党議員は反発し、採決をボイコットするために州外に移動した。共和党のアボット知事は退避した議員は州民に対する義務を放棄したとして除名処分や逮捕を命じ、連邦捜査局(FBI)にも捜索への協力を模索するなど大きな騒ぎとなったが、最終的に区割り案は可決される見通しである。しかし、問題はテキサスにとどまらず、今度は民主党が地盤であるカリフォルニア州などで区割り変更の計画を発表し住民投票に向けた動きに発展。共和党もオハイオ州、インディアナ州でも同様の可能性を探るなど、どんどんエスカレートしている。民主党は全国的な抗議活動の展開により世論を巻き込む狙いがあり、双方が大量の資金を投入している。























































