大統領選挙の投票日まで半年を切った。イスラエルによるガザ地区攻撃に反対する大学キャンパスでの抗議活動が大きな話題になっている。抗議する学生は大学内の広場にテントを並べ、一部の学校では警察が介入する騒ぎとなった。デモは短期間で多くの大学に拡大し、既に3000人以上が逮捕された。5月は米国の大学の卒業シーズンだが、安全性の確保などの理由により式典の中止も発表されている。今年の大学卒業生の多くは新型コロナウィルスの真っただ中に高校を卒業した世代でもある。
若年層の多くはパレスチナ人の置かれている惨状に同情している。伝統的にイスラエル寄りの傾向が強い米国政府の立場や中高年世代の価値観とは異なる。また、若者ほど米国の中東情勢への関与に消極的な意見が多く、国際情勢における内向き志向が強い。米国の目指すべき方向性についての考え方の違いが若者の政治不信の一因になっており、その怒りの矛先が現職のバイデン政権に向かっているのは否定できない。
こうした抗議活動が次第に静まるのか、11月の投票日まで続くのかが大統領選挙における注目点である。中東情勢そのものの行方にも大きく左右されるため、見通しは立ちにくい。だが、ベトナム戦争の反戦運動で民主党全国大会にデモ隊が押しかけ、大統領選で民主党が敗北した1968年の再来を警戒する声もある。同年には民主党内の分裂によりジョンソン大統領が再選を断念、公民権運動の指導者だったキング牧師や民主党の大統領候補の予備選を戦っていたロバート・ケネディ上院議員が暗殺されるなど、米国は混乱の最中にいた。若者が徴兵の恐怖に直面していた当時と比べるのも若干無理があるが、奇しくも、今年8月に予定される民主党の党大会は当時と同じシカゴで開催される予定となっている。