9月中旬、ナイフを持った元米軍人の男がホワイトハウスの敷地を囲む柵を乗り越え、建物1階の奥の部屋まで侵入した。男が拘束された地点はオバマ大統領の家族の居住スペースの1階上で、一家は不在だったものの、シークレットサービスにとっては大きな失態となった。
しかもこの侵入事件は、シークレットサービス当局にはびこる隠匿体質も露呈させた。当局は当初、男が建物内に足を踏み入れたところで取り押さえたと発表し、10日後にワシントンポスト紙に真相を報じられて批判を浴びた。
同紙は翌日も当局の別の隠匿を暴いた。侵入事件の3日前に、オバマ大統領がエボラ出血熱対策の協議でアトランタのCDC(疾病対策センター)を訪問した際に、犯歴のあるCDCの民間警備員が銃を持って大統領とエレベーターに同乗したことである。シークレットサービスは挙動不審の警備員を疑って銃所持を突き止めていたが、公表を避けた。同紙は二つの告発報道の情報源を示していないが、筆者は大統領を危険にさらし続けても警備体制の不備と隠匿体質を正そうとしない今の当局に業を煮やした組織内部からの働きかけではないかとみている。
さすがに、ここまでシークレットサービスの失態と隠匿体質が露呈すると他のメディアも議会も黙っていない。議会では当局とピアソン長官に対して責任追及と警備体制の見直しを求める声が上がった。そしてピアソン長官の議会の公聴会での証言は説得力もなく、組織と部下を守ろうとする気概も感じさせずで、同長官の辞任やむなしとの認識を超党派で広げただけだった。オバマ政権も長官の証言を受けて更迭に動き、証言翌日には長官が自ら辞任した。