2010年に成立した医療保険改革法は、国民皆保険を目指すオバマ大統領と民主党にとっては歴史に残る偉業となるはずだった。米国民に民間医療保険への加入を原則的に義務付け、一定の所得以下の国民に補助金を支給することで、現在約4800万人(全人口の15%相当)いる無保険者を減らそうというものである。「大きな政府」を嫌う共和党は、過去3年近くにわたり徹底して同法を撤廃に追い込もうとし、昨秋には政府の一時閉鎖や連邦債務のデフォルト危機まで引き起こしたが、結局挫折した。ついに医療保険改革法は今年1月からの本格施行にたどり着いたかに見えた。
しかし、同法は主要施策である保険市場の運営が10月から始まった途端につまずいた。個人の登録手続きに関して、登録サイトの接続障害が多発した上に、オバマ大統領が「既存の保険契約を望む国民は維持できる」と説明してきたのに、登録手続きが始まると保険会社から「既存契約が医療保険改革の最低基準を満たさない」として解約通知を受け取る契約者が続出したのである。
政権最大の功績であった医療保険改革が主要施策の導入でつまずき、公約違反との批判の声も上がったことで、オバマ大統領の支持率は40%前後と就任以来最低に落ち込んだ。しかも不支持率が55%前後と過去最高に上昇、支持率が落ちても高水準を保ってきたオバマ大統領に対する信頼も最新調査では49%に落ちた。振り返れば、2013年は包括的な移民制度改革や税制改革、銃規制の強化など期待された重要課題で成果はほとんどなく、外交でもアジア重視の姿勢が曖昧になり、対シリア軍事攻撃は撤回に追い込まれるなど迷走続き。その上に医療保険改革がつまずいたのだから、政府閉鎖騒ぎで共和党を完敗に追い込んだ実績など吹き飛んでしまう。わずか1カ月前には共和党の自滅で今年の中間選挙での楽勝の観測さえ出ていたのに、オバマ政権は一転して発足から5年目で最大の危機に直面してしまった。