着任して1カ月、ワシントンは既に選挙モードに突入している。民主党、共和党の候補者争いは早々に決着がつきそうで、11月5日の投票日までにはまだ半年以上。盛り上がるのは早すぎる気もするが、誰と話をしてもどうしても選挙の話題になる。バイデン大統領やトランプ前大統領の日々の発言、最新の世論調査の結果、国際情勢や国内政策などの細かな動きを捉え、それらが大統領選にどのような影響を与えるかについての議論が続く。テイラー・スウィフトでさえ、ワシントンではミュージシャンとしての活躍よりも大統領選の枠組み内で評価されてしまう。
もうひとつ感じるのが景気の強さである。日本の感覚が残る筆者にとってはテイクアウトのサンドイッチに15ドルを払うのには未だに尻ごみするが、周りは平然と買っている。高級レストランのランチは平日でもかなり埋まっている印象だ。経済指標も好況を示唆している。2023年の実質GDP成長率は前年比+2.5%と潜在成長率(+1.8%程度)を大幅に上回った。労働市場ではコロナ前の状態を上回る雇用の増加が続いている。物価上昇率は着実に改善しており、実質賃金の伸びに後押しされて消費が拡大する。株価は史上最高値を更新しており、資本主義がうまく機能しているように見える。
ここで不思議なのがバイデン大統領の支持率である。コロナ禍の真っ只中に発足したバイデン政権はかなりの実績を挙げてきた。米国救済計画法の成立でパンデミックからの回復を確実なものとし、インフレ抑制法(IRA)では気候変動対策やエネルギー安全保障分野への巨大予算を割り当てた。中国経済が足踏みする中で世界からの投資が集まり、今や米国のひとり勝ちの様相だ。それなのに、バイデン大統領の支持率は4割に届かず、歴代大統領の同時期と比較しても明らかに低迷している。この一見矛盾する状況はどのように解釈すべきなのだろうか。