この849ドルの17%は文房具などの学用品に充てられる。もちろん、日本でも学用品を買う訳だが、アメリカの場合、親が購入した学用品の多く、例えば鉛筆、消しゴム、のり、ハサミ、さらにボックスティッシュ、ウェットティッシュ等を教室に納めるケースが多い。そうした物はクラスの教師が保管し、適宜生徒に配布されることになる。自分のものになる訳ではないので、日本のように児童が自分の好きなキャラクター付きの文房具を買うという発想はない。学年の終わる6月過ぎには学校からブランドやサイズ指定入りのショッピングリストが親に配布され、親はそれに従って購入する。州によってはBack to school shoppingのための売上税免除の週も設けられる。さらに、買い物に行く時間がない親のために、オンラインのサービスもある。特定の学校と提携したオンラインストアは、教師が指定するサイズや銘柄の品物をバンドルして提供もする。もちろん、経済的な理由で指定のブランドに手が届かない、さらにはそもそも購入できない家庭もある。そうした家庭の児童に文房具を寄付する仕組みも存在するし、教室で集められた文房具が渡される場合もある。さらにそれでも文房具や学用品が足らず、教師が自腹で準備することも常態化している。2018年のデータだが、小中学校の教師の93%が自費で何らかの学用品を購入し、その平均額は年間459ドルに達する。全米の教師の平均給与は6万ドル程度であり、決して高給ではない。この窮状を救うための寄付を行う動きも出てきている。特定の事案を支援するクラウドファンディングもあれば、教師が必要な買い物リストを公開し、寄付者が選んで購入し、届ける仕組みもある。こうした経済的に厳しい学校が存在する一方で、毎年多めに親に購入させた学用品を貯め込む学校もあると聞く。格差は教育の現場にも及んでいる。
アメリカの学校では学用品の供出以外にも、卒業式や野外授業等の催し物の開催に際して親に寄付を求める場合も多い。教育の一環として一般的に行われる行事でも、全国的な学校システムが一律で予算を押さえることを潔しとせず、各学校や地域が必要と判断するものを必要なだけ、さらにそのために必要な資金調達は必要と考える人々が行う、という考え方であろうか。そこで生じる格差が不満であれば、自分自身で努力する。そのための機会は均等に与えられている。成功するか否かは自分次第。成功すれば裕福な地域に住み・裕福な学校に子供を通わせられる。そうした原則がしっかり機能しているところがアメリカの成長の原動力であろうか。