筆者がワシントンに赴任した6年前。トランプ政権が誕生して3カ月足らずの頃。「歴史上、1期で終わる大統領は少なく、2期務めるのが常識」という説がよく聞かれた。同時に「何としてもトランプの再選を阻まねばならない」「普通であれば2期だが、トランプ政権は1期で終わらせたい」そんな声も多かった。
この、2期が常識という説だが、実態は少し違う。歴代45名の大統領中で2期8年以上を務めた大統領は14名だ。また、再選を果たしたものの、2期目の任期が4年未満の大統領が3名。これを加えても17名にすぎない。残りは、再選できなかった・2期目に出馬しなかった大統領であり、これが27名。実はこちらの方が余程多いのである。
大統領の任期は2期が上限。フランクリン・ルーズベルトが例外的に4期まで務めた、という話も、半ば常識のように語られるが、この2期上限が憲法に加えられたのは1951年と、比較的最近の話である。それ以前の2期上限の縛りは、初代大統領ワシントンが、2期で勇退し、前例となったものだ。従い、フランクリン・ルーズベルトの「例外」は、法規ではなく前例に沿わなかったにすぎない。さかのぼれば、18代大統領のグラントや26代大統領のセオドア・ルーズベルトも3期目を目指した。ただ、いずれも予備選での敗退や党の方針で断念している。
第二次大戦に巻き込まれないために、という大義名分で3期目、その後は大戦の遂行のために、と大義を書き換えて4期目まで務めたフランクリン・ルーズベルトだったが、こうしたやり方への疑問から、それまでの前例を法令化する動きが起きる。それが1951年、2期上限を定めた憲法修正第22条の成立に結実するのである。