ファストカジュアル。米国の外食産業の中で最も好調な業態であり、2014年の売上は前年比11%増とファストフードの6%増を大幅に上回る伸びを記録した。最近、株式を上場して日本進出を発表したハンバーガー・チェーンのシェイク・シャックもファストカジュアルである。
客単価が9〜13ドル、「ファストフード」と上級のファミリーレストランに近い「カジュアルダイニング」の中間に当たるファストカジュアルが好調な理由は三つあり、一つはよい食材と料理へのこだわりである。地元で取れた新鮮な食材を店内で調理する地産地消のスタイルで、冷凍の食材は使わない。抗生物質を使わない食肉や有機野菜など安全な食材を使う。料理の味が大事。安価な食材を調達して工場で加工するファストフードとは対極だが、それが消費者に支持されている。
ここで際立つ企業がチポトレ・メキシカン・グリル(以下チポトレ)である。ファストカジュアルの草分け、代表的存在の同社は、店舗のカウンター上のボードにメニューよりも先に「誠実な食品」という食材調達の公約を強調する。直営や専属の地元農場で自然な状態で栽培・飼育された最良の野菜や肉しか使わない。その上で、年200店前後の新規出店を続け店舗数は1800店近いなど拡大志向もある。
第二の理由は、メニューの高度なカスタマイズ、店内の洗練されたデザインやリラックスできる雰囲気など、サービスやコンセプトへのこだわりである。チポトレは、カウンターに並べた食材を顧客に選んでもらって自分だけのブリトーなどを作る方式で人気がある。ファストカジュアルではチポトレの次に有名なパネラ・ブレッドは、清潔で明るい雰囲気のカフェでおいしいサンドイッチやスープ、コーヒーを出すコンセプトが女性に人気である。
第三の理由は、ファストカジュアルで好調な企業が非価格競争を勝ち抜いて高い顧客満足度を得ていることである。だから、ファストカジュアルは高めの価格設定が顧客に受け入れられる。価格競争に明け暮れてきたファストフードではあり得ない成果であり、事業展開の余地でははるかに有利になる。実際、チポトレの客単価はマクドナルドの2倍、最近の値上げ幅もチポトレが大きいのに、2014年の既存店ベース売上高はマクドナルド2%減に対してチポトレ17%増である。