新型コロナウイルスの影響で栄養不良の子どもたちが増える可能性がある。これがウイルス感染拡大に伴ってアメリカで表面化した問題だ。アメリカでは2200万人に上る数(2018年度)の児童が、連邦政府の補助を受けた無料・割引の学校給食(昼食)の対象となっている。そして学校が休校になると、この人数の子どもたちの食事がなくなる恐れが出てくる、というものだ。
休校による給食の停止に伴い、多くの学校は代替としてテイクアウトの食事を準備した。2018年度実績では給食制度などの費用は182億ドルだったが、3月末に成立したコロナ救済法案には追加で88億ドルの予算が組み込まれた。さらに連邦政府は、テイクアウト給食を親が取りに行くことを認める決定をした。さもないと子どものウイルス感染を恐れる親が子どもに食事を取りに行かせない可能性もあるからだ。
米国の近代的な給食制度は国の産業政策と安全保障から始まった。1946年成立の全国学校給食法成立の背景には、農業保護(余剰農作物の政府買い取り)と富国強兵(第二次大戦中に多発した栄養不良による徴兵不合格者問題への対処)という二つの考え方があった。この、農業保護と栄養不良対策の考え方は今日の制度にも残っている。学校給食(昼食)プログラムは農務省の管轄下に置かれており、学校朝食・夏季食料サービスなどのプログラムやフードスタンプ(補助的栄養支援)プログラムなどと共に、国内の低所得者層向けの食料費補助・栄養支援の範囲で扱われている。