Scope#32 | TYTON BioSciences

高品質でスタイリッシュな“廃棄物”

世界のファッション市場は年間約150兆円規模の大きな産業の一つであり、今後も人口の増加に伴い更なる拡大が見込まれる有望な市場だ。特に近年のファストファッションの台頭は市場を大きく変え、商品・サプライチェーンも大きく変化した。それまで手の届かなかった最新の流行デザインが、リーズナブルな価格、且つ高品質で多くの人々の手に届くようになり、人々の生活に豊かさや楽しさがもたらされている。 一方では、近年、アパレル製品の生産・消費量は著しく増加した。それと同時に、長く着る、着古すという習慣が薄れ、 捨てられる服も増えている。気づけば自宅のクローゼットが、ほとんど着ていない服であふれていた、という人も多いのではないだろうか。

環境課題をタイトンが技術力で解決する

今、アパレル製品の大量廃棄が大きな社会問題となりつつある。グローバルブランドやグローバルSPA企業がソリューションを求められる中、この課題に真正面から取り組もうとしているのが、TYTON BioSciences社(タイトン社)だ。
タイトン社のCTOのボべ氏はルーマニア出身で、学生時代に日本に渡り、大阪府立大学で博士号を取得している。そこでの研究成果を活かして、古着や工場から出る端材を繊維原料にリサイクルする技術を開発、同技術を商業ベースで確立、普及させることを目的に、CEOのピーター氏と共同で2011年に米国バージニア州のダンビルにタイトン社を設立した。

タイトン社の、熱と圧力を使った加水分解技術には4つの大きな特徴がある。1つ目は、綿の再生が可能であること。これまでもポリエステルを再生する技術はあったが、綿は燃料として使用、もしくは廃棄されていた。2つ目は、綿・ポリエステル共に85%以上という高い比率で再生できること。3つ目は、主に水を使用し化学品の使用を最小限に抑えていること。4つ目は、廃棄物(古着、端材等)を主な原料とすることから価格競争力を有すること。

タイトン、サイデ、そして丸紅―強固なパートナーシップが実現

この技術に成長の可能性を見出し、丸紅ライフスタイル本部は2019年タイトン社に出資した。
丸紅は古くからアジアにおいて原料メーカー、紡糸・紡績工場、縫製工場等、サプライチェーンにおける各段階の有力企業と強固な関係を築いてきた。そして2017年にトルコのサイデ社に出資することで欧州グローバルSPA企業への販路を獲得。これらにタイトン社の技術力を組み合わせることで、巨大市場である米国・欧州、そして生産大国であり今後の有望な市場でもあるアジアにおいて、グローバルに循環型サプライチェーンを構築していく。

(本文は、2019年10月の取材をもとに作成しています)