ScopeNEXT GENERATION #5 | P.T. Megalopolis Manunggal Industrial Development

インドネシアの強みとデジタルを掛け合わせ、次世代型工業団地を目指す

世界経済を大混乱に陥らせたコロナ感染はASEAN経済の中核、インドネシアにも容赦なく襲いかかった。日本企業など約180社が進出するジャカルタ東部の「MM2100工業団地」も2020年春以降、度重なる感染の波にさらされ、現地従業員だけでなく、日本人駐在員にも感染が相次いだ。

「地元との絆が生きた」。2019年春にMM2100を販売、管理・運営するP.T. Megalopolis Manunggal Industrial Developmentに赴任した田中啓介にとって、コロナ感染は想定外の巨大な試練だった。独自ルートでのワクチン入手と入居企業向けの接種、地元病院との連携など打った対策のほとんどは、実は感染が起きるまでの1年間に築いた人間関係が力となった。その感染防護体制だけでなく、インドネシア工業省と連携することによる入居企業のビザ取得の援助などにも尽力し、コロナ感染下でも通常の操業を続けることができた。

ベトナム、タイなどが都市ロックダウンとともに生産・輸出が大混乱に陥り、稼働を許された日系工場も従業員、駐在員が工場敷地内に数カ月泊まり込む「バブル」方式という不便を余儀なくされたのと対照的だった。

今、コロナだけでなく、米中対立、ロシアのウクライナ侵攻などグローバル・サプライチェーンを揺るがす出来事が相次いでいる。1970年代以降、半世紀をかけて日本の製造業が集積して来たASEANや中国で、産業立地の転換が再び進み始めた。「MM2100でも工場の退出と進出は活発化の兆しもある」と田中は言う。人口2億7000万人の内需獲得を目指す進出は依然として多いが、豊富な労働力、とりわけ技術者人材に目を付けた輸出型製造業の関心が高まっている。

MM2100含め日系企業が入居する大規模工業団地が並ぶジャカルタ‐チカンペック高速道路。大渋滞で知られ、弱みのひとつだったが、2019年にジャカルタ‐チカンペック高速道路の上部に高架高速道路が開通し、また南部に並行する高速道路や輸出港のタンジュン・プリオクに向かう環状高速道路の建設も進んでいる。交通インフラの改善はMM2100の立地条件をさらに高めるのは間違いない。

立地環境の変化を待っているだけではない。田中が今取り組んでいるのは「工業団地のスマート化、デジタル化」。入居企業向けのアプリを導入し請求書をペーパーレス化するなど、業務効率化に貢献している。

さらに海外展開する日本企業にとって今、大きな悩みとなっている電力はじめエネルギーの確保とコスト。MM2100は資源に恵まれたインドネシアの強みを生かし、アジアの工業団地では最も優位なエネルギー供給体制を提供できている、と田中は胸を張る。

グローバル・サプライチェーンの大変革期にMM2100は「次世代型工業団地」への変貌を遂げつつある。

(本文は、2022年7月の取材をもとに作成しています)