Scope#14 | PLM Trailer Leasing

ライバルの背筋を“凍らせる” 米国の冷凍・冷蔵トレーラーリース会社、PLM

By James Simms

ダラス/ニューアークにて── Don Durmは“捜査官”だ。

彼はなにも罰金をとったり、手錠を掛けたり、拘置所に入れたりはしない。ただ彼は、あなたがそんな羽目に陥らないようにしてくれる。そして、膨大な時間とお金を浪費することのないように会社を守ってくれるのだ。

霜だらけの食品パック、びしょ濡れの段ボール箱、床には謎の液体の水たまり──。冷凍・冷蔵食品の配送に携わっている立場の人間なら、自社の倉庫やトレーラー内でそんな光景は決して見たくないだろう。それが行きつけの食品店やお気に入りのレストランで、あなたが客の立場だったとしたらどうだろう。なおさらショッキングな光景だ。

今抱えている、そしてこれから起こりうる問題を発見し、解決策を提示するのが、PLMのカスタマー・ソリューションのヴァイス・プレジデント、Don Durmの仕事である。ニュージャージー州ニューアークに拠点を置き、フリートのコンサルティングとマネジメント・サービスを提供するこの会社は、米国における冷蔵・冷凍トレーラーリース・レンタル業の最大手で、運用する冷蔵・冷凍トレーラーは9,000台超に達する。

問題を放置したり、問題の発生防止を怠れば、食品メーカーや輸送業者、流通業者、小売業者らは、ただでさえ少ない利益を失うことになりかねない。米国食品医薬品局(FDA)が制定した食品安全近代化法(FSMA)は、食品製造・出荷業界においておよそ80年ぶりの抜本的な新規制をもたらすことになった。2017年から施行されたこの新規制に抵触すれば、操業停止や商品回収を余儀なくされたり、高額な罰金が科され、果ては重罪犯人として逮捕される事態になる可能性まである。

成長する冷蔵・冷凍輸送セクターの変革を促すため、FSMAは、特に2017年に公表された最終規則において、冷凍・冷蔵食品の輸送と取扱いに関する新基準を定めた。事業者は、この規制の遵守徹底のために、新たなリスク・ハザード分析、記録管理、手順書、そして技術の導入が求められている。

ある驚くべき統計がこの規制のきっかけになった。米国疾病予防センターから得たデータによれば、サルモネラ菌などによる食中毒により、米国で年間4,800万人、つまり約6人に1人が発症し、128,000人が入院、3,000人が死亡している。温度管理の不備や二次汚染なども原因の一つである。

「状況が一変しました」。新規則がもたらした影響について、KeHE Foods社のAndy Baileyは振り返った。同社のテキサス州食品輸送ディレクターを務めるBaileyは、輸送の全過程において、トレーラーの温度管理からモニタリング、書類化まで一貫して対応できるPLMのテレマティクス・システム‘ColdLink’が、規制を遵守するためのひとつの鍵となったと言う。

「PLMは、私たちがFSMAの綱領に対応するにあたり、一緒に取り組んでくれた優れたパートナーです。PLMがFSMAに関する情報やデータ、記録管理の方法を提供してくれたので、当社は競争力を落とさずに米国政府の規制を遵守することができています」。

この分野の成長におけるもうひとつの、おそらくより重大な要因は、冷蔵が必要なオーガニック食品やフレッシュな生鮮食品などの需要増加だ。米国トラック輸送協会によれば、生鮮・冷凍及び加工食品の冷蔵・冷凍輸送による収入は2015年に合計143億米ドルであった。

危機を乗り越えたPLM

消費者や規制の変化に支えられ、PLMは過去4年間にわたって2桁の収入増加率を達成している。2016年度(2017年3月まで)の収入は、1億1,700万ドルに達した。

より重要なのは、2011年のKeith ShippのCEO就任であった。彼が戦略の転換を遂行した結果、PLMは4年連続で過去最高益記録を更新し、将来のさらなる成長を見据えた取り組みを進めている。しかし、このトップ交代が実施される前は、まったく先行きが見えない状況であった。

2000年に丸紅のグループ会社となったPLMは、2008年の米金融危機(リーマンショック)に端を発した大不況による赤字に陥り、危機に瀕していた。低迷するトレーラー稼働率に散々な収入、トレーラー資産の評価損によって打撃を受けていた。

トレーラーのリースより利益率が高いレンタル業務が当時の収益の60%を占めていた。しかし、最長で7年契約をしているリースと違い、レンタルはせいぜい日・週・月といった短期間であるため、レンタルは不況の影響を受けやすかった。

顧客に「できない」とは決して言いたくない

主な業績回復手段として、Shippは顧客のニーズに重点を置き、PLMの強みを活かした戦略を実施すると共に、社内コミュニケーションを改善した。社内に蓄積されている専門知識と顧客のニーズを鑑み、PLMは、顧客の効率を高め、コストを削減し、利益を支える8つの重点分野に注力することを決定。これらビジネスモデルの構築と顧客満足度の改善のための新たなプロセス開発に社員を巻き込んだことで、社員の定着率とやる気の向上につながり、勝つための社風を作り上げることができたという。

この8つの重点分野は、Shippがより長期的な戦略の一部として築いたもので、財務・リース方針、顧客の業務に合わせたトレーラーの設計、顧客向けオンサイトサービスを含むメンテナンス、トレーラーを追跡し食品の安全を推進するテレマティクスを含む安全と法令遵守等で構成されている。

その結果、大きな効果が現れた。PLMのトレーラー車両のリース率が、2011年以前の約35%から、現在の65%まで飛躍的に伸びたのである。これによって財務の安定性が増し、顧客へ与信供与しやすくなった。

「2011年以降、短期のトレーラーレンタル業からフリート・ソリューションを提供する会社へと変貌するための改革に取り組み、会社を成長させてきました。その結果、毎年11~12%の2桁成長を達成。現在の私たちの目標は、それを継続することです」とShippは語る。「私たちは、顧客が必要とするものをしっかり見つめ、そしてそのニーズを満たすためのビジネスモデルをいかに構築し、成功へ導くことができるか考えるよう変化したのです」。

利幅が少ない分野において、リース会社が自社のことだけでなく、顧客のニーズに重点を置くことは決定的に重要な意味を持つ。例えば、国際フードサービス流通業者協会によれば、流通業者の利幅は2%以下である。

では、顧客重視の姿勢はどこから始まるのか?まず冷凍倉庫を見てみよう。
KeHE社のダラス流通センターで、PLMのDurmは、氷点下にもなる倉庫の中でも平然とPLM独自のField Trailer Needs Analysis(フィールド・トレーラー・ニーズ・アナリシス)について語る。

「PLMの社員は2~3日以上の時間をかけて、荷物が倉庫でトレーラーに荷積みされ、小売店やレストランで荷卸しされるのを観察し、顧客の流通ルートに同乗します」。社員は温度を測り、メモし、写真を撮り、各作業の時間を計測する。それをもとに作成された詳細なレポートは、当局の監視につながるような顧客の問題解決・予防に役立ち、利益向上にもつながっていく。新しい規則に精通していると評判の高いDurmは、IRTA(国際輸送冷凍協会)のFSMA対策の為のベストプラクティスガイドの作成にも協力した人物だ。

「顧客に合った冷凍・冷蔵トレーラーの仕様や設計を考えるため、彼らのビジネスを学ぶことに努めます」とDurmは話す。「PLMの対応はこの業界ならではのものです」。

最近、このような非凡な専門性のおかげで、PLMは大金星をあげた。

3年に及ぶ努力の結果、大手銀行やリース会社などのはるかに巨大な競争相手を差し置いて、PLMは数千万ドル相当の2件のリース契約を大手小売会社から勝ち取ることに成功した。その会社は、以前はトレーラーを自前で保有していた。決定的な差は、金額ではなく、一見些細に思えるが、しかしとても重要なトレーラーのアプリケーション・デザインの部分であったとPLMのシニア・ヴァイス・プレジデントのMark Domzalskiは語る。

PLMはこのような専門知識に加え、顧客の個別のニーズに沿った柔軟なリース期間を提供しているが、ここまでするライバル会社はない。このおかげで顧客はコストを削減できる。例えば、顧客は、リース期間を自身の輸送契約に合わせたり、リース期間中にトレーラー台数を変更できるようになる。

ダラスに拠点を置くトラック輸送会社、K.L. Breeden & Sonsの最高財務責任者、Jerry Biedigerはこう語る。「私たちはリース期間中、少し上乗せした対価を喜んで支払っています。長い目で見れば、彼らの対応の柔軟性が私たちのコスト削減となることを知っているからです」。

Domzalskiの言葉が、PLMの顧客対応について何よりも物語っている。
「私たちは顧客に対して、“できない”とは決して言いたくないのです」。

(本文は、2017年5月の取材をもとに作成しています)