Scope#27 | 丸紅リートアドバイザーズ
(旧社名:ジャパン・リート・アドバイザーズ)

ジャパン・リート・アドバイザーズは2023年12月に社名を丸紅リートアドバイザーズに変更しました。

J-REIT市場への参入

J-REIT(Real Estate Investment Trust、リート)は東京証券取引所に上場し、多くの投資家から集めた資金を不動産に投資し、その運用益を分配する不動産投資信託だ。2001年に最初の2銘柄が上場し、2019年3月末時点での上場銘柄数は63、資産規模は18.3兆円に達する。
丸紅グループの『ジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社』(JRA)は、2003年にJ-REITの『ユナイテッド・アーバン投資法人』(UUR)を上場させて運用を開始し、丸紅が持つ金融と不動産の知見をフル活用することで、資産規模を実に10倍超に増加させた。

しかし、JRAのこれまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。UURが東証に上場した2003年当時はまだREIT黎明期で、将来的にこのマーケットが十分に成長できるのか見通せない状況であったのだ。UURは当時後発の10番目に上場し、規模の面でも見劣りしたため、運用資産の規模と質の両面でのキャッチアップが急務であった。

3つの戦略

この課題を乗り越え、飛躍を可能にしたものは、丸紅が持つ不動産と金融の知見であった。
JRAは大きく3つの戦略を採用してきた。投資対象不動産の拡大、M&Aによる不動産規模の拡大、そして運用資産の収益力向上だ。

戦略1:投資対象不動産の拡大
UURは、先行する他銘柄の多くがオフィスビル投資に特化する中、商業施設やホテルなど、多種多様な物件に投資する戦略を採用して差別化を図った。
投資不動産の用途を分散することで、競合が多い物件を高値掴みせず、ホテル等の有望な分野には他社に先駆けて進出。さらに丸紅が持つ小売・物流などの幅広いネットワークを活用することで、取引先等の潜在的な売却ニーズを捉えて物件を取得し、資産規模を拡大させてきた。

戦略2:M&Aによる不動産規模の拡大
2008年の金融危機の際には、存続が困難になるリートが続出した。しかしUURは、市場が過熱する中でも慎重な取得目線を崩さず、強固な財務基盤を築いていた。その結果、金融危機をいち早く乗り越え、丸紅のM&A経験を活用して日本コマーシャル投資法人を吸収合併。これを機に、UURは一気に業界トップ5の規模にまで拡大した。

戦略3:運用資産の収益力向上
さらに、丸紅が蓄積してきたノウハウにより、賃貸収入や運営コストを常に見直しながら、物件競争力を向上させてきた。
最近では、電力小売り自由化の機を捉え、多数の物件で電力需給契約を丸紅新電力に切り替えることにより電力コストを大幅に削減。また、損害保険による不動産のリスクヘッジとコストセーブについては、丸紅セーフネットがアレンジしている。

挑戦は続く

その結果、ユナイテッド・アーバン投資法人の資産規模は、2018年度までの14年間で約10倍となり、6,000億円超に至る。

もちろん、これで終わりではない。JRAは、更にノウハウを蓄積するほか、丸紅グループとして新しい視点や手法の開発を推し進め、今後もUURの規模拡大と収益性向上への挑戦を続けていく。

(本文は、2018年9月の取材をもとに作成しています)