環境TCFD提言に基づく情報開示

丸紅グループは、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、2019年2月にTCFD※1提言に賛同の意を表明するとともに、気候変動がもたらす「機会」および「リスク」の把握、情報開示の拡充に取り組んでいます。

1 金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

気候変動に関する考え方

丸紅グループの現状認識

丸紅グループは、気候変動をグローバルかつ緊急性の高い社会課題であると認識しており、環境・社会マテリアリティの一つとして特定しています。

国際社会が協調し温室効果ガスの排出削減を進めていくパリ協定の枠組みのもと、民間セクターが果たすべき役割への期待とニーズが高まっていることを認識し、ビジネスを通じて気候変動対策に貢献することが、丸紅グループの持続的成長につながると考えています。

気候変動に関する基本的な考え方

丸紅グループは、気候変動に関連する社会の変化を「先取り」し、「成長機会の創出」と「リスク低減」に努めます。

① 温室効果ガス排出を削減するビジネスの創出

温室効果ガス排出を削減する新たなビジネスの創出、特に他の排出主体※2の温室効果ガス排出削減に資するビジネスの創出の実現を成長戦略のひとつに据えるとともに、当社グループの温室効果ガス排出削減にも取り組んでいきます。

2 取引先や、製品・サービス提供先を中心とした、当社グループ外の排出主体

② 機動的な事業ポートフォリオの見直し

気候変動の影響を受けることにより陳腐化や収益の圧迫が予測される事業については、代替案の検討のみならず、事業そのものからの撤退も選択肢のひとつとし、企業価値を毀損することがないよう、事業ポートフォリオを適切なタイミングで見直し、資産配分の変更を実行していきます。

一例として、「サステナビリティへの取組み方針に関するお知らせ(石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業について)」(2018年9月18日付)を公表し、新規石炭火力発電事業に原則として取り組まないこと、石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末の約3GWから2030年までに半減させることを宣言しました。

③ 多岐に分散された事業ポートフォリオ

丸紅グループの事業ポートフォリオは多岐に分散されており、特定の産業やビジネスに固有のリスクが、グループ全体の財務状況に与えうる影響は限定的であることから、気候変動に対するレジリエンスは相対的に高いと考えられます。

<丸紅グループ(連結ベース)の収益構造>
丸紅グループ(連結ベース)の収益構造

ガバナンス

図:気候変動ガバナンス体制
図:気候変動ガバナンス体制

丸紅グループは気候変動関連の重要事項について、取締役会の監督が十分に得られる体制を構築しています。

具体的にはTCFD提言に基づく気候関連の「機会」と「リスク」の評価、戦略、リスク管理、指標と目標の設定や見直し、モニタリングを、気候関連のイノベーションの進捗や外部環境の変化を踏まえ、社長の諮問機関である「サステナビリティ推進委員会」を中心として実施したうえで、年に1回以上の頻度で、取締役会への報告を行っています。また、重要事項を経営会議および取締役会にて審議・決定しています。

サステナビリティ推進委員会の委員長は代表取締役(Chief Sustainable Development Officer)が務め、社外取締役・社外監査役もアドバイザーとしてメンバーに加わっており、独立した外部の視点も踏まえながらサステナビリティに関する事項の管理・統括を行っています。

戦略と具体的取り組み

【気候関連の機会・リスクの評価結果概要】

図:機会・リスク特定と重要度評価のプロセス
図:機会・リスク特定と重要度評価のプロセス

丸紅グループでは、「気候変動に関する基本的な考え方」に基づき、気候関連の機会・リスクに対して、戦略的な取り組みを行うことに努めています。
2019年度はTCFD提言に基づき、1.5℃未満シナリオと4℃シナリオの世界観を踏まえ、営業本部ごとに2050年の気候関連の機会・リスクの特定、重要度評価を行い、各営業本部における重要度の高い機会・リスクを特定しました。その後、営業本部ごとの重要度評価を踏まえ、丸紅グループ全体として影響を比較的大きく受けると想定される重要度の高い気候関連の機会・リスクを特定しています。なお、具体的な実施方法については後述しています。

丸紅グループ全体としての気候関連の主要な機会・リスク、またとくに重要度が高いとした機会・リスクおよびそれぞれへの対応方針は以下の通りです。

● 気候関連の主要な機会・リスク

  1. 化石燃料に依存しない再生可能エネルギー・新エネルギーの普及、排出削減関連政策
  2. 低・脱炭素型交通へのシフトによる関連市場の需要増減、新たな事業機会増加
  3. リサイクル・サーキュラーエコノミーへのシフトによる取引機会・新たな事業機会増加

● 重要度が高い機会のある事業
丸紅グループとして特に重要な機会がある事業として、「再生可能エネルギー発電事業」を特定し、機会獲得に向けた取り組み方針を策定しています。

重要度が高い機会のある事業

● 重要度が高いリスクのある事業
丸紅グループ全体に与える影響が比較的大きな気候関連のリスクのある事業として、「石炭関連事業」を特定し、リスク低減に向けた取り組み方針を策定しています。

重要度が高いリスクのある事業

【機会・リスクの特定・重要度評価の実施方法】

図:使用シナリオの概要
図:使用シナリオの概要

■ 使用シナリオ
気候関連の機会・リスクの特定にあたって、2050年を対象にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5℃特別報告書」を参考とした1.5℃シナリオの世界観と、IPCCのRCP8.5シナリオ(高位参照シナリオ)を踏まえた4℃シナリオの世界観を描きました。

図:機会・リスクの特定と重要度評価(イメージ)
図:機会・リスクの特定と重要度評価(イメージ)

■ 気候関連の機会・リスクの特定と重要度評価方法
上記の1.5℃シナリオ、4℃シナリオの世界観を踏まえ、次世代事業開発本部を除く13営業本部の気候関連の機会・リスクを特定しました。特定した機会・リスクを、当社グループへの影響度を縦軸、発生可能性を横軸としたマトリクスを使用して整理し、各営業本部での重要度評価を行いました。

・機会・リスクの影響度評価
評価項目:特定した「気候関連の機会・リスク」に関連する売上・費用、想定市場規模・売上規模を各営業本部内にて相対的に、大、中、小の三段階で評価

・機会・リスクの発生度評価
IPCC第5次評価報告書(AR5)及びIEA等に基づき発生可能性を評価

【参考】営業本部ごとに特定した機会

営業本部レベルで実施した重要度評価において、重要な機会があると特定した事業及びサービスについて気候関連の事象ごとに整理をしています。

【参考】営業本部ごとに特定した機会

また、特定した機会に関する具体的な取り組み事例は以下の通りです。

事業および提供するサービス 取り組み事例
アジア・欧州市場での大型洋上風力発電や中東市場等の太陽光発電事業の実施 アラブ首長国連邦スワイハン太陽光発電事業(グロス発電容量1,177MW) リリース
オマーン国アミン太陽光発電事業(グロス発電容量105 MW) リリース
秋田県洋上風力発電事業(グロス発電容量140 MW) リリース(20.02.03)
リリース(20.03.27)
電源の分散化に伴う地域密着型ユーティリティー事業の実施 長野県伊那市での地域密着型ビジネスの共同開発 リリース
再生可能エネルギー発電・分散型電源関連設備や関連部材機器の供給、関連事業の実施 未電化地域にて太陽光発電を用いた電力サービス事業を行うタンザニアWASSHA社への出資 リリース
分散型電源案件の開発支援サービスを行う米国GridMarket社への出資 リリース
太陽光パネル試験事業を行う米RETC社への出資 リリース
太陽光パネルリサイクル事業に係る鳥取再資源化研究所との業務提携 リリース
システム調達から発電所の開発支援を含む再生可能エネルギー発電ソリューション型ビジネスの提供 関連情報
再生可能エネルギー発電設備、CCS等の脱炭素に資する設備の設置・建設 CO2の回収・有効利用/再資源化(CCU)技術を有する英国CCSL社への出資 リリース
再生可能エネルギー、グリーンファイナンスを扱うファンドの組成 ジャパン・インフラファンド投資法人の設立による太陽光発電設備等への投資 リリース
再生可能エネルギーや電化の促進に不可欠な銅の供給 チリ ロスペランブレス銅鉱山の生産力強化と調達資金のグリーンローン認定 リリース
チリ アントコヤ/センチネラ銅鉱山の再生可能エネルギー調達 リリース(19.05.30)
リリース(20.04.03)
水素、アンモニア、バイオ燃料等のCO2フリー燃料の供給 日豪間および宮城県内における水素サプライチェーン構築の実証実験 リリース(18.04.12)
リリース(18.08.03)
火力発電におけるCO2フリーアンモニア混焼に向けたフィージビリティスタディ リリース
電気自動車(EV)等の低炭素製品・クリーンエネルギー車両の販売やシェアリング 大型商用車両の電動化を目的とした中部電力との合同会社によるEVトラックの最適運用に係る実証実験 リリース
EVに必要なリチウム電池材料、コバルト、ニッケル等の供給や、アルミニウム等の軽量化素材の供給 材料供給等によるリチウムイオン電池事業の共同開発に係るスウェーデンNorthvolt AB社との覚書締結 リリース
軽量かつサステナブルなアルミニウムの取扱に係るオーストリアAMAG社との覚書締結 リリース
マグネシウム地金生産・販売事業を立ち上げるカナダAMI社への出資 リリース
EV充電インフラ関連設備の提供 大型再生バッテリーを用いたEV用量産型マルチ超急速充電器の開発に係る実証実験 リリース
廃棄物資源化・リサイクル事業の関連設備供給 日本における代替航空燃料の製造・販売事業に関する事業性調査の実施 リリース
セルロースナノファイバーの供給 セルロースナノファイバーの用途開発と事業化に係る中越パルプ工業との業務提携 リリース
古紙再生事業である板紙製品の販売 興亜工業、福山製紙等の国内拠点及び海外拠点でのビジネス拡充 リリース
繊維リサイクル事業 繊維再生技術を有する米国TYTON BioSciences社への出資 リリース
植物工場の関連設備を供給 日本種イチゴ栽培用温室機材のロシアVictoria Estate社への供給 リリース

【参考】営業本部ごとに特定したリスク

営業本部レベルで実施した重要度評価において、重要なリスクがあると特定した事業及びサービスについては、各営業本部においてリスク低減に向けた取り組みを検討し実施しています。以下に、営業本部レベルでの重要度評価の一部を示しています。

気候関連の事象 想定される事業へのインパクト 対応方針 関連本部
移行リスク 再生可能エネルギーへのシフト、排出削減関連政策 再生可能エネルギーやEVへのシフトによる化石燃料の販売量減少は収益を悪化させる要因となる。 水素、アンモニア、メタネーション、CCS等の新エネルギー開発に注力 エネルギー本部
再生可能エネルギーへのシフトにより、石炭鉱山向けの建設機械(鉱山機械)、鉱山用大型タイヤの需要減少や、排出削減に向けた規制強化により仕入れ原価高騰が収益を悪化させる可能性がある。 蓄電池、分散型電源関連機器の販売機会を追求 建機・産機・モビリティ本部
EVへのシフト EV等低炭素製品への移行に伴う先行コストの増加、既存の部品・自動車の需要減少が収益を悪化させる可能性がある。 EV普及に伴う販売機会の増加、充電インフラ等への需要増に対応
物理リスク 気候パターンの変化 気象パターンの変化により主力地域である北米地域における穀物不作が生じると、集荷ビジネスや農業資材ビジネスの収益に大きな影響を与える可能性がある。 気候変動の影響を受けにくい新技術の開発や農業支援ビジネスの拡大 アグリ事業本部
異常気象の激甚化
(台風、洪水、大雨)
異常気象の激甚化で物流機能の麻痺が生じると、影響を受ける可能性がある。 調達・販売拠点網の地理的分散や新規産地の開拓
図:影響度の評価
図:影響度の評価

丸紅グループとしての重要度の高い事項は、「産業としての気候変動の影響度」と、「自社グループへの影響度」に基づき特定しています。

TCFD提言において、気候変動の影響が大きいとされる4つのセクター(①エネルギー、②運輸、③素材・建築物、④農業・食料・林業製品)に関係する本部のビジネスを「産業としての気候変動の影響度」が高い分野とし、丸紅グループ全体の売上・費用規模を踏まえた「自社グループへの影響度」と合わせて評価し、丸紅グループにとって重要度の高い気候関連の機会・リスクを特定しました。

リスク管理

丸紅グループにとって重要度の高い機会・リスクについては、サステナビリティ推進委員会で管理・モニタリングを行います。特にリスクについては、国際機関や各国政府・各産業セクターや産業団体を中心とした国内外のサステナビリティ関連動向、投資家、金融機関、非政府組織等ステークホルダーに関連する情報も参考としながら、リスク評価の見直しを実施していきます。

■ 社内プロセスにおけるリスク管理
投資決定プロセスにおけるリスク分析のひとつとして、気候変動リスクを含むサステナビリティ関連リスクの評価を導入しています。

指標と目標

丸紅グループが設定している指標と目標は以下の通りです。目標に対する進捗状況はサステナビリティ推進委員会が管理を行い、年に1回を目途に公表を行う方針です。

指標と目標 進捗および取り組み状況
1. 石炭火力発電事業によるネット発電
容量を、2018年度末の約3GWから
2030年までに半減
約2.7GW(2019年度末時点)
【参考プレスリリース】  2019年10月4日 サステナビリティへの取組み方針・進捗のお知らせ
(石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業について)
2. 再生可能エネルギー電源の比率を、
ネット発電容量ベースで2023年までに
約20%へ拡大
  • 2019年4月にアラブ首長国連邦にてスワイハン太陽光発電事業(グロス発電容量1,177MW)の商業運転を開始
  • 2020年5月にオマーン国にてアミン太陽光発電事業(グロス発電容量105MW)の商業運転を開始
  • 2019年12月に愛知県蒲郡市におけるバイオマス発電事業(グロス発電容量44MW)の融資契約に調印
  • 2020年1月にカタール国・アル・カルサ太陽光発電事業(グロス発電容量800MW)の長期売電契約を締結
  • 2020年2月に秋田県秋田港及び能代港における洋上風力発電事業(グロス発電容量139MW)の融資契約に調印
3. 2023年度までにグリーンレベニューを
約1兆3,000億円に拡大
約7,700億円(2019年度)