Mining Green Futureーグリーンな未来を掘り起こす
― 脱炭素化で需要が拡大する銅。センチネラ銅鉱山のグリーン化への取り組み ―

目に見えなくても、至る所にあり、不可欠なもの

銅の需要はこれまで以上に高まっている。地球温暖化ガスの削減に向けて再生可能エネルギーの利用や移動手段の電化が進む中、今後数十年にわたり需要が供給を上回ると予想されているのだ。需要が急増し、価格も上昇する一方、鉱石の品位(含有率)の低下、鉱山の枯渇、新しい鉱山の建設が過去に比べて困難になるなど、供給拡大には制約がある。

2023年12月、丸紅と英国・アントファガスタ社はチリ北部アタカマ砂漠にあるセンチネラ銅鉱山の銅精鉱の生産能力を倍増させる拡張プロジェクトの投資意思決定をした。丸紅はセンチネラの30%を、アントファガスタが70%を保有している。今回の44億ドルの拡張プロジェクトは2027年に生産を開始する予定で、年間17万トンの増産により、センチネラを生産量(銅地金換算)で世界有数の銅鉱山に押し上げることになる。

エネルギー移行に重要な金属を供給する一方、資源とエネルギーを多く消費する鉱山操業を行うセンチネラ自体も環境負荷低減の措置を講じている。操業用水には鉱山から150キロメートル離れた太平洋から汲み上げた海水を100%利用していることや、2022年からは操業に用いる電力を100%再生可能エネルギーに切り替えたことが代表的な取り組みだ。

海水をそのまま使用することは、地域コミュニティに配慮した選択であると同時にコスト削減にもつながる。海水をそのまま利用する場合は、海水を淡水化する場合に必要な脱塩プラントの建設・操業費用、海水処理後の処分のコストを削減することができる。また、地球上で最も乾燥した場所の一つであるアタカマ砂漠で大量の地下水を利用することは持続的な操業ではない。海水の使用し水資源の保全に貢献することは鉱山のある地域社会との良好な関係を維持するためにも重要なのである。
さらなる取り組みも進む。たとえば、50台の新しい電気ピックアップトラックの導入や、重機の水素燃料電池利用の実証実験も行われている。これは、2035年までにScope 1およびScope 2のCO2排出量を50%削減するという計画の一環である。2022年には、エスペランサ・スール鉱区で使用されるコマツ製ダンプトラックの完全自動化を達成し、採掘の効率を向上させ、コストを削減した。こうした取り組みの結果、2021年には「責任ある生産」ならびに国連が提唱するSDGsへの貢献を示す枠組みである銅業界の認証Copper Markを取得した。

丸紅とアントファガスタは、価値観を共有した良きパートナーとして、今後も新たなプロジェクト開発機会を探っていく。