米国の大統領選挙は、多くの場合、民主党と共和党の候補の間で戦われ、そのいずれかが選出される、という単純明快な印象があるが、その手続きは単純ではない。まず、大統領選挙は間接選挙であり、有権者は候補者を選ぶのではなく、事前にどの候補に投票するかを宣誓した選挙人を選ぶ形になる。さらに、選挙や投票方法の詳細について連邦法が定める内容は限られており、多くは州に委ねられている。50州の内、48州においては、州ごとに割り振られた選挙人数の過半を押さえた候補が当該州の全ての選挙人数を獲得する、勝者総取り方式が採用される。例外はメイン州とネブラスカ州で、この2州は州内の選挙区ごとに割り振られる選挙人数が存在する。このように選挙人の数を積み上げて全体選挙人数538人の過半数、270人の選挙人を獲得した候補が大統領に選出される。仮にいずれの候補も過半数を取れなかった場合、大統領は下院が、副大統領は上院が、おのおの選出することとなる。
選挙のやり方が州によって中身が違うのと同様、投票手続も千差万別だ。コロラド・ハワイ・ワシントン・オレゴン・ユタの5州では全面的な郵送での投票が行われている。カリフォルニアやフロリダをはじめとする22の州では有権者が希望すれば郵送での投票が可能だ。それ以外の州では例えば当日不在であるなどの理由がない限りは郵送での投票が認められていない。電子的手段(電子メール・ファクス・ウェブなど)を通じた投票も一部条件付きで行われているが、おおむね海外派遣の軍関係者(特に危険地域への派遣)の不在投票に限られる。