過去の混戦の予備選では、最初のアイオワ州と次のニューハンプシャー州の勝者が指名を獲得することが多かったが、今回の共和党はこの2州だけでは見通しが立たないだろう。13州の予備選・党員集会が集中する3月1日のスーパー・チューズデーでも本命候補が定まらない可能性が高そうである。
もっとも筆者が今注目しているのは、誰が指名されるかではない。昨年12月中旬時点での支持率が3割前後で首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏と10%台の支持率でその後を追うテッド・クルーズ上院議員の上位2人の候補の異例の戦いである。
共和党は一枚岩の政党ではなく、所属する政治家と支持者は、党運営を独占し続けるエスタブリッシュメントと呼ばれる主流派、草の根で同党を支える保守派と一般大衆という三つのグループで構成されている。各グループの主張やイデオロギーの違いは大きい。そのため、過去の同党の大統領候補の指名争いでは、候補者の属するグループはもちろん、他グループからも幅広い支持を獲得することが勝利の条件だった。一般投票も、共和党内のグループを超えた支持の強さに左右され、実際優れていたレーガン元大統領とブッシュ前大統領は再選を果たしている。