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成長投資マネジメント室 座談会

投資の「型」を全社へ波及させ、
次なる成長を先導する。
“セトマ”の挑戦

丸紅グループは中期経営戦略GC2027において、更なる成長を加速させるため「成長への資本配分・投資戦略」を掲げています。その中核を担う組織として、各営業部門に「成長投資マネジメント室(以下、セトマ)」が新設され、投資の専門組織として全社的な質の向上を推進しています。本鼎談では、食料・アグリ部門、エアロスペース・モビリティ部門、次世代事業開発部門の各成長投資マネジメント室長が集い、セトマ設立の背景から、部門ごとの活動の違い、この1年で見えてきた変化や課題、そして今後の展望について語り合いました。

成長投資の質を高める、現場密着型の専門組織

登坂
私は以前、旧インフラプロジェクト本部で10年以上、M&Aや事業投資に継続的に携わってきました。現在所属するエアロスペース・モビリティ部門は、投資の経験が豊富なチームとそうでないチームが混在しており、組織全体として投資スキルを底上げする必要がありました。会社が求める「投資の専門家」としての知見やノウハウは、扱う商材や業界を超えて通用する普遍的なものです。そのため、部門の枠を超えて投資の専門知識を還元し、案件の質を高めることがセトマに求められている重要な役割だと認識しています。
伊藤
私自身は、食品事業部で新規案件のソーシングと投資実行を営業の現場で経験してきましたが、その現場で培った知見を現在のセトマでの活動に活かしています。
緒方
私は次世代事業開発部門(2019年度設立)の立ち上げ期から参画し、それ以前は電力やエネルギー、経営企画など幅広い領域での事業開発を経験してきました。私たちの部門でも、新しい事業領域を切り拓いていくためには、投資の精度を高める専門部隊が欠かせません。セトマが各部門に設置されたことで、投資のノウハウがより現場に近いところで共有されるようになり、全社的な投資の質の向上に大きく寄与していると感じています。
伊藤
次に、私たちの具体的な役割についてお話しします。セトマの役割は、各営業部が主導する投資あるいは撤退案件の伴走です。食料・アグリ部門では、2025年度の例として、豪州の肉牛肥育事業であるRangers Valleyの売却案件をセトマがサポートし、投資回収を実行しました。また、私たちの部門では、営業部が主導する案件の伴走だけでなく、部門の広範な事業領域の中で、どの分野に注力して投資し、逆にどこから撤退するかという、領域選定の戦略をセトマが策定し、部門へ提言することを大きなミッションにしています。その戦略に基づき、新規案件の発掘や撤退案件の立案を行い、営業部と一体となって進めていくことを重要な役割と考えています。
伊藤 大輔食料・アグリ部門 成長投資マネジメント室長
登坂
事業の価値向上を主に担うバリュークリエーションオフィス(VCO)も案件によっては初期段階から入ってもらっている案件もありますが、VCOがPMI機能高度化やバリューアップにより軸足を置いているのに対し、セトマは新規案件のソーシングから案件開発、実際の相手方との交渉、社内決裁に至るまで、投資の最前線で動くフロントヘビーな役割を担っています。
緒方
セトマは投資実行の最前線を担いつつ、経営層に近い目線で案件を俯瞰し、重要な論点を整理したうえで、投資規律を踏まえた案件の「型」を各部門に構築していく役割を担っています。規律を徹底しながら、新規投資の積極的な推進を行うことが、私たちの非常に重要な役割と言えます。また、新規投資先の価値向上を見据え、ソーシングの段階からVCOのDXやPMI機能をアピールし、協業しながら投資を実行するアプローチも実践しています。

営業部と同じ目線で案件をつくり、投資の「型」を広げる

伊藤
営業部との関わり方は、部門の特性やこれまでの投資経験によって大きく異なります。食料・アグリ部門では、過去を振り返っても投資経験が少なかった営業部も多いため、セトマが自らアイデアを出し、戦略策定から案件の実行までを主導的に引っ張る「先導型」のアプローチをとることも多いです。
登坂 洋一エアロスペース・モビリティ部門 
成長投資マネジメント室長
登坂
エアロスペース・モビリティ部門はハイブリッド型と言えます。投資経験が豊富で領域も定まっているチームに対しては、モデルの構築や契約書の整備、相手方との交渉サポートといった形で伴走します。航空機アフターマーケット部品販売の米国DASI社の株式追加取得による完全子会社化は、こうした伴走型の関与が形になった案件の一つです。一方で、経験が少ないチームに対しては、伊藤さんの部門のように領域選定から深く入り込み、セトマが中心となって案件を牽引する案件もあります。
緒方
次世代事業開発部門でも、投資案件に不慣れなチームに対しては初歩的な事業計画の策定やデューデリジェンスの進め方から指導しつつ、共に案件をつくり上げていく先導支援を行っています。扱う商材や事業のタイムラインの違いというよりも、各チームの投資の経験値によって、私たちの関わり方やサポートの深度が変わってくるというのが実態です。
登坂
セトマが発足して1年が経過しましたが、確かな手応えを感じています。当初は、営業部から「部門のお目付け役」のように見られることもありましたが、実際に現場に入り込み、手を動かして交渉を先導することで、「セトマを活用したほうがよい」という認識に変わってきました。今では営業部と同じレベルで案件の情報が集まるようになり、私たちが主導した案件が決裁に至るなどの成果もはっきりと出ています。一方で、既存事業のオペレーションの細部にまで踏み込んだ磨き込みや、実際の撤退の実行については、まだ道半ばであり、今後更に取り組みを深めていく必要があると感じています。
伊藤
私たちの部門でも同様の変化がありました。昨年の前半に領域選定の戦略を提示した際は、現場に反発や戸惑いもありましたが、1年間地道に活動を続ける中で、今では各営業部から戦略面での相談が自発的に来るようになりました。時間をかけて関係を構築したことで、現場から頼られる存在へと変わってきた実感があります。
緒方
私たちの部門では、目に見える成果として、セトマのメンバーが営業部と二人三脚で進めた新規案件も生まれてきており、スイス・オーストリアの工作機械販売会社TOLUS Group AGを買収するなど、実際の連携が形となって表れてきています。部門全体としても、投資規律を意識した重要論点を押さえた案件の仕立て方、すなわち投資の「型」が定着してきました。

「攻め」と「守り」を両立し、再現性ある成長投資へ

緒方
活動を進める中で、常に難しさを感じるのは「攻め」と「守り」のバランスです。経営側からは投資規律の徹底という「守り」を強く求められますが、ハードルを上げすぎると営業部から案件が上がってこなくなります。かといって営業部に寄り添いすぎると規律が緩むというジレンマがあり、この距離感のとり方には細心の注意を払っています。
登坂
ブレーキを踏みすぎると相談されなくなってしまいますからね。「このままでは絶対に通らないが、こうすれば通る可能性が高まる」というように、前向きな形でブレーキをかけつつ、案件を正しい方向へ導くことが重要です。営業部との信頼関係を築き、「セトマの意見を聞いてよかった」と思ってもらえるまでのステップが、全体の中で最も苦労した点です。
伊藤
人財育成の観点からは、「打席数」と「打率」のバランスも非常に重要です。打率を上げることはもちろん大事ですが、経験値を高めるためには、良い案件を数多く経験する「打席数」の確保が不可欠です。デューデリジェンスのスコープ設定やアドバイザーの起用など、本では学べない実務のノウハウは、案件の実行を通じてしか得られません。検討途中で撤退するケースも含めて、様々な案件に触れることが実務における目利き力の蓄積に直結するため、このバランスをどうとるかが私たちの課題でもあります。また、対象企業の魅力を言語化・定量化して社内に説明する能力も、投資リテラシーとして徹底する必要があります。
中期的な展望としては、会社の方針である「戦略プラットフォーム型事業」へ新規案件を継続的に加え、その拡張と強化に貢献することが私たちの最大のミッションです。現在、戦略プラットフォームとして定義されていない事業分野においても、新たなプラットフォーム化を見据えた戦略をつくり、案件を一つずつ積み上げていきたいと考えています。
登坂
同感です。各営業部の領域で的確な投資仮説をつくり、それに合致する案件をソーシングし実行していくことで成果を出していきたいです。これを数多くこなすことで、適切な案件を確実に実行する体制を整え、戦略プラットフォーム型事業の創出に注力していきます。この実践の過程を通じて、営業部も私たち自身も経験を積み、結果として次世代の投資人財が育っていくと確信しています。また、セトマで得た知見を出身部署へ還元するため、営業部との間で人財ローテーションを回すことが重要と考えています。
緒方
次世代事業開発部門は新しい部署であり、人財の多様性も増しています。セトマ自身が投資プロセスを進めるうえでのプラットフォームとして機能できるよう、私たち自身の知見を更に高めるとともに、投資経験が浅いチームやメンバーでもセトマの機能を活用して案件を実現できる「仕組み化」を図っていきます。成長投資支援と人財の育成を両輪で進め仕組み化していくことで、丸紅グループ全体の持続的な企業価値向上に貢献していきたいですね。
緒方 伸也次世代事業開発部門 
成長投資マネジメント室長