できないことは、みんなでやろう。
燃料アンモニアで脱炭素社会をリードする

窒素と水素から成る化合物であり、主に農産物の肥料や化学製品をつくる原料として使われてきたアンモニア。そのアンモニアが今、2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指す日本で、次世代エネルギーとして注目されている。用途の1つは、同じく次世代エネルギーとして期待される水素を海上輸送する際の担体(キャリア)として。そしてもう1つが、燃料としての直接利用だ。

アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない。化石燃料を主なエネルギー源とする火力発電や船舶でアンモニアを活用できれば、脱炭素社会の実現に大きく貢献できる。現在、石炭火力発電のボイラーにアンモニアを混ぜて発電する検討が電力会社を中心に行われている。アンモニアだけを燃焼させる研究も進められており、日本政府は2030年までに燃料としてのアンモニアを年間300万トン導入することを目標として掲げる。

丸紅は2021年から、低炭素燃料アンモニアのサプライチェーンの構築を目指し、精力的に複数の事業化調査を進めている。その1つが、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、北陸電力株式会社、関西電力株式会社、東北電力株式会社、北海道電力株式会社、Woodside Energy Ltd.と取り組む、豪州から日本への低炭素燃料アンモニアのサプライチェーンの事業化調査だ。天然ガス由来のアンモニア製造の過程で排出されるCO2にCCS・CCU等のCO2排出削減対策を組み合わせた低炭素燃料アンモニアについて、7者は豪州での生産、日本への海上輸送、発電用・船舶用燃料用途としての利活用等を含めたサプライチェーン構築の蓋然性を高めるべく、事業性を調査している。

工場や発電所から排出されるCO2を回収し、貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)、または有効活用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)する技術

パートナーと連携し、「まだ世の中に存在しないもの」をつくっていく

「再エネからアンモニアをつくり、それを運ぶ船も燃料アンモニアを使い、アンモニア専焼で発電するというのが、究極的な理想のかたちです」。そう話すのは、新エネルギー開発部燃料アンモニア事業開発課長の吉田淳だ。液化天然ガス(LNG)事業に長く携わってきた吉田は、「エネルギーの安定供給という我々の使命は変わらない。その中で、化石燃料から脱炭素燃料へと転換していくために、アンモニア等の次世代エネルギーに取り組んでいる」と話す。

需要と供給を同時に立ち上げる必要があり、当然ながら1社では解決できない課題が山積している。政府や電力会社をはじめとする国内外のパートナーはもちろん、社内では再エネ発電の知見を持つ電力本部含む他本部とも社内連携しながらプロジェクトを進めている。「手探りで進んでいる感覚だが、ひとたび突破口が見えて動き出すと、その先にはとても大きな未来が広がっていると思う」と吉田は言う。「まだ世の中に存在しないものをつくりあげていくために、パートナーと連携し、粘り強く着実に、一歩ずつ進めていきます」

(本文は、2023年1月の取材をもとに作成しています)