2024年
デンマーク王国AquaGreen Holding ApSへの出資参画について
2024/07/19
丸紅株式会社
丸紅株式会社(以下、「丸紅」)は、下水処理の過程で発生する下水汚泥などの湿潤バイオマスを乾燥・熱分解し、バイオ炭を生成する技術を有するデンマーク王国のAquaGreen Holding ApS(以下、「AquaGreen社」)の株式を第三者割当増資により取得することに合意しました(以下、「本案件」)。
下水処理の過程で排出される有機性廃棄物である下水汚泥は、従来、堆肥化、直接または焼却処理後の埋立て(以下、「従来型下水汚泥処理」)することにより処理されていますが、近年、処理費用の高騰や下水汚泥に含まれるPFAS(*1)による健康被害の懸念、温室効果ガス(以下、「GHG」)排出削減(*2)への課題から、各国で処理方法の見直しが行われています。日本においても、環境省が発表している「地球温暖化対策計画」の中で、下水汚泥の処理や省エネ・創エネ対策の推進などにより、下水道分野で2030年度までにGHG排出量を208万t削減(2013年度対比)することを目標として掲げています。
下水汚泥処理技術の一つである乾燥・熱分解技術は、下水汚泥に含まれるPFASやマイクロプラスチック、重金属などの有害物質の除去が可能である上、乾燥・熱分解により生成したバイオ炭に炭素を固定することでGHG排出削減にもつながる有望な技術ですが、下水汚泥は含水率が高く、熱量も低い(*3)ために補助燃料が必要となり、コストが見合わないことから普及が進んでいませんでした。AquaGreen社は、補助燃料を使用せず、下水汚泥の熱量のみで乾燥・熱分解を可能とする技術の開発・商業化に世界で初めて成功し、従来型下水汚泥処理と比較し約80%のGHG排出削減(*4)、および運営コストの大幅削減を達成しています。AquaGreen社は既に納入実績を有する北欧をはじめ欧州での販売を開始しており、丸紅は、AquaGreen社の技術が従来型下水汚泥処理の代替として普及することを目指し、主に日本、アジア、オセアニアへの販売促進を支援していきます。
丸紅は長年、ポルトガル、フィリピン、チリなどにおける上下水道運営事業や、サウジアラビア、チリでの海水淡水化事業、南アフリカでの再生水事業などを実施しており、全世界で合計約1,660万人に水道サービスを提供しています。これまで培った水事業の知見に加えて、本案件を通じて新たに下水汚泥処理分野にも参画することで、環境問題や脱炭素などの社会課題の解決に貢献しながら、より広範な水道サービスの提供を目指します。
(*1) 人工的に作られた有機フッ素化合物の総称。自然界ではほとんど分解されないことから「永遠に残る化学物質」と呼ばれており、人体に取り込まれると蓄積されやすく、発がん、免疫機能の低下、脂質異常、胎児の発育不全などの影響をもたらす恐れがある。下水汚泥の堆肥利用や埋立てにより、地下水や農作物にPFASが浸透し、消費者の体内に取り込まれることによる健康被害が懸念されている。
(*2)従来型下水汚泥処理では下水汚泥のトラック輸送時に排出される二酸化炭素(CO2)、堆肥化や直接埋立て時に下水汚泥から発生するメタンガス(CH4)、焼却処理に伴い発生する一酸化二窒素(N2O)やCO2が問題視されている。
(*3)下水汚泥は通常下水処理場で脱水されるが、含水率は約80%と高く、自ら燃えるための十分な熱量を持っていないのが一般的。なお、日本の一般的な下水汚泥の性状はAquaGreen社の技術で乾燥・熱分解が可能。
(*4)堆肥化と比較し約82%、焼却処理と比較し約78%削減可能(AquaGreen社の検証によるもの)。
<AquaGreen社概要> | ||
会社名 | : | AquaGreen Holding ApS |
所在地 | : | デンマーク王国/ロスキレ市 |
設立年 | : | 2014年 |
代表者 | : | Carsten Gram Haagensen Chief Executive Officer (CEO) |
事業内容 | : | 下水汚泥および湿潤バイオマスを高効率で乾燥・熱分解し、バイオ炭を生成する技術および設備の開発 |
ウェブサイト | : | https://aquagreen.dk/ |
■本案件に関するご質問や資料請求等は、以下よりお問い合わせください。
お問い合わせフォーム