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食品機能材のスペシャリストとして、世界のトップに

食材の魅力を際立たせる“名脇役”である香辛料や調味料。それらを厳選した原料からつくり、欧州の食を支え続けてきた老舗企業がオランダにある。1899年創業のKoninklijke Euroma B.V.(以下Euroma社)だ。

丸紅は2022年、将来の完全子会社化を念頭に同社に出資参画した。丸紅はライフサイエンスと呼ばれる、食品や化粧品、ヘルスケアといった人々のくらしに関わる分野のビジネスを手がけており、その1つが香辛料や調味料をはじめとする食品機能材である。世界では今、健康志向が高まり、塩分を控えめにするかわりにハーブやスパイスを加えて食事を楽しむ人が増えている。さらに人口増加や高齢化といった社会課題への対応としても、食品機能材へのニーズが高まっている。

高品質なハーブ・スパイスの強みを生かし、高度な加工によりさらに付加価値を高めたシーズニングなどの粉製品、ドレッシングやソースのような液体製品など、Euroma社の商品ポートフォリオは多岐にわたり、その数は2,000を超える。人々のくらしに彩りを添えることを使命とする同社の最大の強みは、そのポートフォリオを用いて独自の調合を編み出し、顧客が構想している新製品のアイデアをかたちにできることだ。そうして生み出された同社の機能材によって、さまざまな食品のおいしさや機能性が高められている。たとえば、主にZ世代が支持する植物由来の代替肉は、大豆特有の風味を消し、“肉”としておいしくするための工夫が欠かせない。Euroma社は、成長が期待されるヴィーガン製品向けのシーズニングを注力分野として食品メーカーとの共同研究を始め、代替肉の美味しさを引き出す調味料の開発に取り組んでいる。

優れた商品開発力と高度な製造・品質管理の技術、顧客と強固な信頼関係を築いているEuroma社は、丸紅の今後の食品機能材事業における基盤だ。同社は欧州市場で第3位の売り上げを誇るが、丸紅としては、今後はグローバルネットワークを駆使した世界規模でのビジネス展開も視野に入れている。「事業をサポートしながら、ともに成長していきたい」と、この事業を担う化学品第三部の東健太は言う。

将来的には栄養補助食品、甘味料、飲料など新たな分野への進出も構想している。「最終的には調味料に留まらず、食品機能材のスペシャリストとして世界のトップになることを目指しています」。そう語るのは上田沙蘭だ。両社で協働し、どんなことができるか、すでに意見交換が始まっているという。

「おいしい・安心・安全」のトレンドを世界に発信していく

世界各地から原料を調達するEuroma社は、サプライチェーンのサステナビリティの向上と生産地の経済成長にも、早くから意欲的に取り組んできた。様々な国の香辛料、調味料、食品メーカーが集まって、2012年にSustainable Spices Initiative(SSI)が設立されたが、同社は創設メンバーの1社である。主要3原料の調達において、サステナブルであるという認証を受けた原料比率を2025年までに25%以上にするという自己目標を掲げ、全社をあげて取り組んでいる。

「食糧難、人口増に伴う問題、原料の安定調達など、人間が生きていくうえで向き合わなければならない問題を解決する仕事ができるのは幸せなことです」。そう話すのは、東、上田とともにEuroma社を担当する彦坂佑哉だ。社会の情勢や潮流、人の味の好みは、つねに激しく変化している。そのなかで、同社が自らトレンドを発信して世界をリードできるようにサポートしていくことが、彼らのチームの究極の目標だ。「Euroma社とともに、いろんな絵を描くことができる」と東は言う。「食品機能材という視点から食の安心・安全に貢献していきたい」