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#44 | SmartestEnergy

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SmartestEnergy
脱炭素化へ向かう道のりを照らす

再生可能エネルギーは、しばしば有機食品に例えられる。価格に付加価値が加味されているため、消費者が手を出しにくいと言われてきた。ところが健康意識と環境への配慮が高まるにつれ、どちらも広く支持されるようになった。さらに近年は食品と同様に、電気も生産者を特定したいと考える消費者が増えている。

2000年創業で丸紅の完全子会社であるSmartestEnergy Limitedは、再エネを専門的に取り扱う英国の電力卸売・小売会社であり、企業の脱炭素化に向けた取り組みを世界中でサポートすることを使命として掲げている。新たな市場や領域に国境をまたいで進出し続けており、過去6年のあいだに米国やアジア地域でも事業をスタートさせた。また、一気通貫のビジネスモデルにより、同社は電力バリューチェーンの全流域で存在感を発揮している。川上においては独立系の発電所から再エネを購入し、川下においては様々な電力供給プランを法人顧客に販売する。その中間においては、電力および再生可能エネルギー証書のトレーディングを行う。さらに近年は、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)のような調整電源を活用した電力購入やトレーディングも積極的に推進している。購入した電気を一旦蓄え、市況が最適になったタイミングで売ることを可能にする蓄電池は、今後新たな価値を生む画期的なテクノロジーとして期待を集めている。

SmartestEnergyは英国市場において法人向け電力販売量で3位、再エネ証書のトレーダーとしてトップ3に名を連ねる。また、再エネ比率100パーセントの認証を獲得している電力を供給するプランを英国で他社に先駆けて開始した。このプランを通じて購入した電力は水や太陽光、風など、すべて自然の恵みを活かしてつくられたもので、二酸化炭素の排出量はゼロであると、利用顧客は宣言できる。

2024年には、電力源に関する情報の透明度をより一層高めた革新的なプラン「Traceable Renewable Supply」の販売を開始した。これはもっとも高度なレベルで再エネを証明するものである。顧客は30分ごとに詳細なレポートを受け取り、自分たちの電力消費量とSmartestEnergyが契約する再エネ発電所の発電量を照合することにより、ほぼリアルタイムで電力源を追跡できるという仕組みだ。

「20年前は、英国に限らずどの国の市場でも低コストで電力を調達することが法人需要家にとって最優先であり、電源構成に対する関心は低かった」。そう当時を振り返るのは,2004年にSmartestEnergyに入社し、現在はCEOを務めるRobert Grovesだ。「ところが今、世界的な潮流として、企業が電源構成に対してより強いこだわりを示すようになっています。再エネの利用を証明し、環境に配慮している姿勢を明確に示すことが、企業価値の向上につながるからです」

アセットライト戦略で敏捷かつ柔軟に事業を展開

SmartestEnergyが手がけるビジネスは、近年ますますデータに依拠したものになっており、情報技術(IT)は文字通り事業の根幹をなす。既存のITプラットフォームのメンテナンスとは別に、同社は毎年粗利益の10~15パーセントを新規のIT投資に充てている。また、英国本社では全社員の4分の1に相当する約120名をIT部門に配置していることからも、テクノロジーがSmartestEnergyにとってきわめて重要であることが窺える。

「自社で発電所を持たないため、データと情報そして知見こそが、まさしく我々のビジネスモデルの心臓部なのです」。そう話すのは、SmartestEnergyでCTOを務めるRob Pringleだ。同社は長期電力購入契約(PPA)を結ぶことによって、取引先である発電所の収益を最大化する。一方で、天候により供給が断続的になりがちな再エネを長期間安定的に購入したい法人の需要家に対しても、競争力の高い価格を提示している。こうしたオペレーションのすべてにおいて、複雑かつ広範なデータが求められるのだと、Pringleは言う。「テクノロジー戦略は、当社が持つ資産の価値を最大限に引き出すことを中心に考えます。我々の資産とは、ビジネスモデルを実現してくれる人材にほかなりません」

複雑で値動きが激しい電力市場でトレーディングを行うSmartestEnergyにとって、データ分析はリスク管理を徹底するうえでも欠かせない要素である。「お客さまにお届けするのに必要な量と買い付けるべき量の双方を、非常に高い精度で把握していることが肝要です」。そう話すのは、同社で事業戦略と事業開発を統括するシニアヴァイスプレジデントのBeth Reidだ。たとえば、向こう3年間の電力をSmartestEnergyから購入する契約を希望する顧客に対して、その期間における電力価格を提示するためには、顧客自身が示す将来の電力消費予測に基づいて数字をはじき出さなければならない。「自社のリスクヘッジもさることながら、お客さまを市場の劇的な変化からしっかりと守ることのほうが大事です。そのために必要なツールと、それを使いこなせるハイレベルな人材が当社には揃っています」とReidは言う。加えてフォーチュン・グローバル500企業に名を連ねる丸紅の後ろ盾があることはきわめて重要であり、これによりSmartestEnergyは事業を展開するのに不可欠な安定性と信頼を得られるのだという。

SmartestEnergyの成功を支えている要因は、ほかにもある。自らの資産保有を抑えて財務体質をスリムに保つアセットライトな経営もその1つだ。これにより、つねに変化する電力市場のトレンドや新たに発生するニーズに対して、敏捷かつ柔軟に対応することができる。「従来は再生可能エネルギーであること自体が付加価値であったが、すでに世界中でかなり普及し、それ自体の価値は薄れてきている」。そう指摘するのは、丸紅から出向しSmartestEnergyでCOOを務める津崎優だ。「これからはトレーサビリティ(電力の見える化)が求められる時代になる。再エネにどんどんシフトしていくというメガトレンドは今後も変わらないので、SmartestEnergyが活躍できる市場は拡大し続けると確信しています」

顧客の多様なニーズと状況に合わせてソリューションを提供

2024年に建設工事が完了し、2025年初頭に発電を開始した太陽光発電所のKiln Fieldsは、ハンプシャー州に位置する。最大出力は18メガワット。およそ7,000世帯分の電気を賄える発電力を備える。SmartestEnergyは2025年2月、この発電所のオーナーであるBlackfinch EnergyとPPAを結び、ここでつくられる電気を流通可能にした。Blackfinch Energyは投資のスペシャリストであり、同社のポートフォリオには太陽光や風力などいくつもの再エネ発電所が含まれる。Kiln FieldsはSmartestEnergyが同社と契約している20のPPA案件のうちの1つだ。「SmartestEnergyとの契約はすなわち、我々が今後1年から3年にわたって供給する電力に対して固定価格が設定されることを意味します。これは当社が財務計画を立てるうえで非常に大きな安心材料になる」。そう話すのは、Blackfinch Energyでエネルギー部門を率いるStefan Agopsowiczだ。

SmartestEnergyにとっては、Blackfinch Energyをはじめとする独立系の発電所と契約を結ぶことは、リスクの低い再エネ供給源を確保できることと同時に、顧客に対してトレーサビリティの提供が可能になることを意味する。“電力の見える化”によって、顧客は自分たちの地元にある良質な発電所でつくられた電気を使っているという確証が得られるのだ。「自分たちがつくった電気を流通させる仕組みを独立系の発電所に提供し、彼らが市場で稼ぐことができるようにすることが、我々の仕事です」。そう話すのは、SmartestEnergyで発電プロジェクトの立案と営業の責任者を務めるAngus Widdowsonだ。

脱炭素化に向けた取り組みをサポートするうえで、その歩みの速度や状況は企業ごとに異なるため、万能な解決策というものは存在しない。すでによく練られた戦略や計画を打ち出している企業もあれば、最初の一歩の踏み出し方がわからずにいる企業もある。カスタマイズされた複雑な電力供給プランを好む企業もあれば、パッケージ化されたごくシンプルなソリューションを求める企業もある。「だからこそ私たちは、あらゆるニーズに応えられるように、多様なソリューションを持ち合わせていなければなりません」。そう話すのは、SmartestEnergyで営業部門を担当するヴァイスプレジデントのJames Graham だ。「お客さまが再生可能エネルギーに関して最適な意思決定を行えるように、私たちは様々な選択肢を提案します」

英国と同じビジネスモデルで海外に進出

SmartestEnergyは2019年に米国、次いで2020年にオーストラリアに進出した。どちらの拠点でも、英国で成功しているビジネスモデルがそのまま応用されている。「我々が行っているのはプラットフォーム事業であり、同じビジネスモデルをほかでも踏襲できる」とCEOのGrovesは言う。「電力市場の仕組みはほぼ万国共通なので、どの地域においても自分たちのビジネスモデルを丸ごと持ち込んで、すぐに実践することができるのです」

また、SmartestEnergy は2024年から欧州エネルギー取引所(EEX)において、ドイツの電力と天然ガスのトレーディングを行っている。さらに同年、同じく丸紅の完全子会社である丸紅新電力株式会社とともに、互いに50パーセントずつの出資により合弁事業を立ち上げた。新たに設立された丸紅パワートレーディング株式会社は、丸紅新電力の日本における顧客基盤とSmartestEnergyの電力トレーディングにおける専門的な知見という2社の強みを掛け合わせ、日本市場で電力トレーディング事業を行う。SmartestEnergyはこれからも新たな地域に進出し、海外事業を拡大していく予定だと、 Grovesは話す。「今後3年から5年のあいだに、当社売上の50パーセントは海外の事業所や海外市場が占めるようになると予想しています」

既存事業をさらに成長させることは当然のことながら、これからSmartestEnergyが海外市場において存在感を高めていくためにも、丸紅のサポートは必要不可欠であり続ける。「SmartestEnergyは電力ビジネスのプロフェッショナルとして、このビジネスをリードする役割を担う。一方で、丸紅はグローバルネットワークと財務力を提供している」とCOOの津崎は言う。「世界規模で脱炭素化へのソリューションを提供できたときに初めて、我々のビジネスが成功したと言えるのだと思います」

https://group.smartestenergy.com/
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