発見から解決まで、デジタルの悩みをワンストップで
より便利なサービスや安全な暮らしを実現するために、DXやAIを駆使したビジネスの変革は、社会のさまざまな場面で、もはや「必然」となっている。
丸紅グループは、総合ICTサービスを展開する丸紅I-DIGIOホールディングス(以下、丸紅I-DIGIO)と、DXコンサルティングサービスを提供するドルビックスコンサルティング(以下、ドルビックス)を中核に、一気通貫の体制でデジタルソリューション事業に取り組む。
顧客と二人三脚で課題を特定するところから戦略立案、システム・プロダクトの提供、ネットワーク構築、運用・保守まで、単なるツールの販売にとどまらない総合ICTサービスにより顧客の多様なニーズに柔軟に対応する。
システム提供は、スタートラインだ
埼玉県所沢市にある西武鉄道株式会社(以下、西武鉄道)の本社。
コンピューターの画面には、列車が走る踏切内の映像が映し出されている。踏切にはAIカメラが設置されていて、行き来する人や自転車の動きをくまなく検知し、リアルタイムで画面上に表示する。
このシステムを提供しているのが丸紅I-DIGIOだ。踏切内の状況をAIが高精度で検知し、遮断機が下りているのに人が線路内に滞留する事態が起きれば、即座に列車の運転士に異常を知らせる。西武鉄道ではこのシステムを2022年に導入した。
西武鉄道でシステム運用を担当する三浦一也氏は「従来、踏切内の人の滞留を検知できるシステムはありませんでした。安全性を高め、少しでも多くの命を守ることに役立てています」と語る。
もちろん、AIカメラを設置すればすべての問題が解決するわけではない。むしろ導入はスタートラインだ。検知の精度を維持するにはカメラの調整など日々の運用・保守こそが重要になる。
丸紅I-DIGIOではシステムの提供にとどまらず、こうしたサポートまで含めて丁寧に顧客と向き合うことを重視している。
「踏切周辺の環境の変化で検知に異常が出た際などに、丸紅I-DIGIOの担当者が迅速に対応にあたってくれるため、最大限、検知精度を維持することができています」(三浦氏)
「AIファースト」の世界
丸紅I-DIGIOは、2023年に、丸紅グループの4つのICT関連企業が集結することで誕生した。ICT基盤の整備や製造業のDX支援など取り扱う分野は多岐にわたり、それまで各社に偏在していた機能や知見を集約することでシナジーを追求している。
中でも、いま注力しているのが前出のAIの領域だ。丸紅I-DIGIOの佐藤由浩社長は語る。
「生成AIやAIエージェントといった技術は、目覚ましく進化しています。丸紅I-DIGIOにはさまざまな事業領域がありますが、すでにすべてがAIと切り離せない『AIファースト』の世界に入っています。我々はお客さまの立場に立ち、お客さまがAIを活用することで何が実現できるかを一緒に考え、ニーズを満たす仕組みを提供していきます」
企業がAIを活用する上で、課題となるのがデータ基盤の整備だ。AIを活用しようにも、データが点在していると効果が限定的になってしまうからだ。丸紅I-DIGIOでは企業内のさまざまなシステムに点在するデータを集約する統合基盤の構築や、AIエージェントを用いてデータを活用する分析ソリューションを組み合わせたサービスの事業化に向けて取り組んでいる。
丸紅 I-DIGIO から丸紅に出向し、AI 事業を担当する水戸雅樹氏は「業種を問わず、AI の活用によって多くの業務を効率化できると考えています」と語る。
「AIの活用や、データドリブン経営にシフトしたいお客様に、最適なソリューションを提供することで役に立ちたいです」
また、すでにAIを組み入れたサービスの提供を開始している。冒頭で紹介した踏切内の検知システムに加え、生成AIを活用したコールセンター支援サービスが挙げられる。
このサービスでは、AIがコールセンターにかかってきた電話の内容をテキスト化し、最適な回答候補をオペレーターに提案する。そして会話のトーンを分析し、顧客の感情やオペレーターの元気度まで数値化することができる。コールセンター業務の改善だけでなく、オペレーターの応対品質向上にも役立てられている。
見えない課題を、可視化する
デジタル技術活用において、多くの企業が頭を抱えるのが導入の前段階だ。
「テクノロジーで業務を変えたい」という意欲はあっても、事業のどこに課題があり、どの技術を使えば解決できるのか。その「見えない課題」を特定することこそが、最も困難だからだ。
丸紅グループでDXを専門とするドルビックスコンサルティングは、この課題特定から実装までを一気通貫で支援することで、企業のニーズに応えている。
その一例が、大手サッシメーカー・不二サッシ株式会社のプロジェクトだ。同社は少子高齢化に伴う労働力不足を背景に、工場の効率化と省人化という経営課題を抱えていた。しかし、具体的に工場内のどこを、どのような技術で代替すればその効果を最大化できるかという実装レベルでの課題の切り分けが、解決への高いハードルとなっていた。
そうした背景から2024年、ロボット活用による省人化プロジェクトが始動した。ドルビックスはまず、この技術課題の解像度を高めることから着手した。
メーカー出身者など製造現場を熟知したメンバーが、現場のワークフローを精緻に分析。「なんとなくロボットを入れる」のではなく、効果を最大化できるポイントを見極めた。
そして、画像処理を用いて部材の形状を読み取り、ロボットで持ち上げ、カットまでを自動化する構想を描き出した。
ドルビックスはこうしたプロジェクトにおいて、単なる提案にとどまらない貢献を重視している。
構想設計はもちろん、実際にその技術が使えるかを確認する要素技術検討、現場導入に向けた試作、そして本番ラインへの実装支援まで、絵に描いた餅を現実に動くシステムへと作り上げる全工程をリードした。
本プロジェクトのコンサルタントである岩佐瑞希氏はこう語る。
「お客様と同じ視座に立つことは基本ですが、我々の強みは『提案書』で終わらせないことです。技術の検証から、実際にロボットが動き、現場の役に立つ瞬間までを見届ける。その具現化力こそが、ドルビックスの提供価値だと確信しています」
ビジネスを一緒に作る
業務改善にとどまらず、ビジネスそのものの立ち上げから一緒に行うケースもある。
2022年に丸紅と出版大手3社などが共同で設立したPubteX(パブテックス)は、出版業界のDXに取り組み、ドルビックスは立ち上げ初期からコンサルタントとして支援に入っている。
PubteXが実装したサービスの一つが、RFIDタグを活用した流通の可視化だ。無線通信を使い、非接触でデータを読み書きするタグを本につけることで、膨大な在庫を従来の数十倍のスピードで管理できる。
どの書店でどんな本が売れているか瞬時に把握できるため、棚卸などの効率化だけでなく、書店がより効果的に販促施策を行うことも可能だ。
ドルビックスはこうしたビジネスアイディアの提供から行った。その後もPubteXと一緒に製本所の製本工程の内部まで入り込んでタグの装着方法を検討するなど、規格化や調達まで二人三脚で進め、2025年1月のサービス開始につなげた。
現在もドルビックスはPubteX とともに本の売れ行きデータを集約して、AIで需要を正確に予測することで配本の推奨値を割り出し、返本を減らすサービスの実装を進めている。
ドルビックスの菅隆之社長は、「デジタル技術が日進月歩で進化・発展する時代、企業活動の前提が大きく変わっていく中で、我々の役割は企業変革のためのシナリオを一緒に描くことです」と語る。
「お客さまの現場にコンサルタントが入り、一つ一つの事実を正しく認識して積み上げていく。そして、変革を実現させるためのアプローチを考え、実行可能なレベルに引き上げていくことこそ、ドルビックスの提供価値です」
一気通貫で、テクノロジーを実装する
最適なデジタルソリューションを提供し、運用や保守まで顧客と一緒に行うことで、デジタル技術をビジネスの現場に落とし込む丸紅I-DIGIO。そして表面化していない課題を顧客と一緒に見つけ、解決策を提示、伴走するドルビックス。
丸紅I-DIGIOの佐藤社長とドルビックスの菅社長は、今後も両社の連携を深め、一気通貫のデジタルソリューションを加速させていくと力をこめる。
「ドルビックスが、業務をどう改善するかといういわゆる『上流』のコンサルティング機能を担い、丸紅I-DIGIOは多様なソリューションで実装を担う連携を進め、丸紅グループとしてAIをはじめとするテクノロジーを一気通貫で社会に実装していきます」(佐藤社長)
(本文は、2026年1月の取材をもとに作成しています)