

企画展
企画展
『ボッティチェリ 美しきシモネッタ』特別公開展
会 期:2025年3月18日(火)~5月24日(土)
休館日:日曜日、祝日

企画趣旨
丸紅ギャラリーでは、東京国立近代美術館で例年開催される「美術館の春まつり」と連携し、丸紅が所蔵する日本で唯一のボッティチェリ(Sandro Botticelli, 1444/1445-1510)のテンペラ画《美しきシモネッタ》を特別公開します。モデルとなった夭折の美女シモネッタ・ヴェスプッチ(Simonetta Vespucci, 1453-1476)が、傑作《プリマヴェーラ(春)》や《ヴィーナスの誕生》のモデルであったといわれ、「フィレンツェの春」あるいは「ルネサンスの春」の象徴的存在でもあったからです。
また2025年は、ボッティチェリの研究で世界的に知られる矢代幸雄の没後50周年にあたります。奈良の大和文華館でもほぼ同時期に矢代幸雄の「没後50年記念特別展」を開催します。さらに2025年はシモネッタが登場する小説『春の戴冠』の著者である辻邦生の生誕100年にあたる年でもあります。本展はそれらの記念年に呼応する形で開催するものでもあります。
この機会にできるだけ多くの皆様にじっくりと《美しきシモネッタ》をご鑑賞頂ければ幸いに存じます。
作品紹介
ルネサンスの「春」を象徴するシモネッタ
《美しきシモネッタ》を描いたルネサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェリは、イタリアのウフィツィ美術館にある《プリマヴェーラ(春)》や《ヴィーナスの誕生》を描いた画家として有名です。それらの絵にも描かれているシモネッタは、1453年にジェノヴァ共和国の富裕な商人の娘として生まれ、アメリゴ・ヴェスプッチの家系に嫁ぎ、フィレンツェに住みます。彼女は、その美しさから馬上槍試合の勝者に兜を渡す女神役に選出されるなど公的に知られる存在となり、時の人となりました。しかし、惜しいことに1476年、彼女は肺結核を患い帰らぬ人となりました。彼女は死後も、ボッティチェリをはじめ多くの画家や詩人たちによって描写され、その「比類なき」美は後世まで伝えられました。
この肖像画のタイトル
丸紅所蔵のボッティチェリによる女性の肖像画を《美しきシモネッタ》(La Bella Simonetta)と呼んだのは、美術史家・矢代幸雄でした。
"『美しきシモネッタ』の肖像と称されるものが5点現存していて、すでに私が指摘したように、それらすべては同じボッティチェルリ的画想を示している。かつてカッペル・コレクションに属し現在はベルリンのノア博士所有になる美しい横顔婦人像がボッティチェルリの作品であると、最近になって私は結論するに至った。"
矢代幸雄(高階秀爾、佐々木英也、池上忠治訳)『サンドロ・ボッティチェㇽリ』1977年、東京、岩波書店
美しきシモネッタの来歴
この絵は1808年にイタリアのボローニャで再発見されて以来、フランス、イギリス、ドイツ、そしてまたイギリスへと延べ5か国を経由し、1969年に丸紅がイギリスから輸入して日本にやってきました。
ボッティチェリのすべての作品のうちで19世紀初めまで遡って来歴を辿れ、しかもその当時の銅版による復刻画が残っているのは非常に珍しいことです。本展では来歴に関わるそうした貴重な資料類も展示しています。
シモネッタをモデルにしたボッティチェリの名作
19世紀後半の美術評論家ジョン・ラスキンは、ボッティチェリの描いた絵のほとんどの女性は同じモデルを使用していると指摘しました。確かに、《プリマヴェーラ(春)》や《ヴィーナスの誕生》、《ヴィーナスとマルス》に描かれている女性たちの顔は、同一の女性を描いたのではないかと感じられます。丸紅所蔵の絵はシモネッタの生前に描かれた可能性がある唯一の肖像画ですが、その他の絵に登場するシモネッタは定型化、キャラクター化されているように思われます。
今後の企画展のお知らせ:
華麗にして繊細 友禅染の神髄 ―丸紅コレクションの友禅染―
(2025年8月5日~9月25日)
(前期:8月5日~8月27日 後期:9月1日~9月25日)