展覧会

企画展

丸紅ギャラリー開館記念展Ⅲ

「ボッティチェリ特別展 美しきシモネッタ」会期:2022年12月1日(木)~2023年1月31日(火)

企画趣旨

本展は丸紅ギャラリー開館を記念して開催する第3回展になります。
展示する絵画は丸紅が所蔵する日本にある唯一のボッティチェリのテンペラ画《美しきシモネッタ》で、1969年にイギリスから輸入して以来53年間丸紅が大切に所蔵してきた作品です。
会期中の2023年1月28日にはシモネッタの生誕570周年を迎えます。そこで本展では、貴重な資料を通じて絵の来歴を時代順に辿るとともに、モデルであるシモネッタについて様々な角度から詳しく紹介し、本作品とシモネッタの魅力を浮き彫りにしようと試みました。
この機会にできるだけ多くの皆様にじっくりと《美しきシモネッタ》をご鑑賞頂ければ幸いに存じます。      

展示概要

フィレンツェの「比類なき」美、シモネッタ

《美しきシモネッタ》を描いたルネサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェリは、イタリアのウフィツィ美術館にある《春》や《ヴィーナスの誕生》を描いた画家として有名です。
それらの絵にも描かれているシモネッタは、1453年にジェノヴァ共和国の富裕な商人の娘として生まれ、アメリゴ・ヴェスプッチの親戚であるヴェスプッチ家に嫁ぎ、フィレンツェに住みます。彼女は、その美しさから馬上槍試合の勝者に兜を渡す女神役に選出されるなど公的に知られる存在となり、時の人となりました。しかし、惜しいことに1476年、彼女は肺結核を患い帰らぬ人となりました。彼女は死後も、ボッティチェリをはじめ多くの画家や詩人たちによって描写され、その「比類なき」美は後世まで伝えられました。

シモネッタの肖像画について

現時点でシモネッタを描いたといわれるボッティチェリ作(工房作含む)の肖像画は、東京の丸紅株式会社が所蔵している作品のほかに、世界に5点ほどあります。フランクフルトとベルリン、ロンドンとオックスフォード、それにフィレンツェにあるものです。そのうち本展では、東京の絵とフランクフルトの絵、そしてオックスフォードの素描の3点をパネルによって比較しています。
なお、《美しきシモネッタ》というタイトルは日本の美術史家・矢代幸雄が著した大著『サンドロ・ボッティチェルリ』第2版(1929年刊行)の中の文章に準拠しています。

美しきシモネッタの来歴

この絵は1808年にイタリアのボローニャで再発見されて以来、フランス、イギリス、ドイツ、そしてまたイギリスへと延べ5か国を経由し、1969年に丸紅がイギリスから輸入して日本にやってきました。
ボッティチェリのすべての作品のうちで19世紀初めまで遡って来歴を辿れ、しかもその当時の銅版による復刻画が残っているのは非常に珍しいことです。本展では来歴に関わるそうした貴重な資料類も展示しています。

シモネッタをモデルにしたボッティチェリの名作

19世紀後半の美術評論家ジョン・ラスキンは、ボッティチェリの描いた絵のほとんどの女性は同じモデルを使用していると指摘しました。確かに、《プリマヴェーラ(春)》や《ヴィーナスの誕生》、《ヴィーナスとマルス》に描かれている女性たちの顔は、マンガのようにキャラクター化され、同一の女性を描いたのではないかと感じられます。丸紅所蔵の絵はシモネッタの生前に描かれた可能性がある唯一の肖像画ですが、その他の絵に登場するシモネッタはパターン化されているように思われます。丸紅の絵のシモネッタが身に着けているデザインの宝石ペンダントは、その他の絵の中のシモネッタにも再三登場しています。

シモネッタゆかりの地

シモネッタの生まれた場所については現存する記録資料がないため特定できていません。ジェノヴァ市内、同市の南にある港町ポルトヴェーネレ、そしてポルトヴェーネレの少し北にある町フェッツァノという3つの説があります。ちなみにポルトヴェーネレとは「ヴィーナスの港」という意味です。イタリアの伝説によると、波間の白い泡から生まれた愛と美の女神ヴィーナスは、ある春の日、大きな帆立貝に乗って、輝くような裸身を波の上に現わしました。この愛の美神が最初に漂着したと言われているのが、ポルトヴェーネレでした。同地域一帯は現在でもロマンティックな人々の隠れた観光スポットになっています。