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丸紅ギャラリー開館記念展 II

「美」の追求と継承
-丸紅コレクションのきもの-
会期:2022年6月7日(火)~8月1日(月)
前期:2022年6月7日(火)~7月2日(土)
後期:2022年7月4日(月)~8月1日(月)
※展覧会は終了しました

企画趣旨

丸紅ギャラリー開館記念展II「『美』の追求と継承-丸紅コレクションのきもの」展と題する本展では、丸紅コレクションの3本柱の一つである染織品コレクションの一部を展観いたします。
本展を通じて、戦前の丸紅商店がどのような意図とどのような審美眼を持って江戸を中心とした染織品コレクションの蒐集にあたったか、また染織技術の進歩に伴う伝統意匠の当代意匠への応用と新たな意匠表現創造にいかにして取り組んだかを、新たな視点と研究成果とともにご紹介いたします。

主な作品

第1章 丸紅商店の審美眼
-江戸時代小袖の優品たち

納戸紋縮緬地淀の曳舟模様小袖
(なんどちりめんじよどのひきふねもようこそで)

江戸時代18世紀後半
前期展示

裾から褄、衿にかけてモチーフを配した江戸褄模様の小袖。描かれているのは淀川の三十石船で、舟子や船頭、乗客たちの表情が描絵によって生き生きと表されている。下絵は江戸時代中期の浮世絵師・勝川春章(1726?-1792)によるものと伝えられる。本作品の制作年代とは時代を異にするが、丸紅創業者である初代伊藤忠兵衛も、近江麻布の持下り(出張卸販売)に出た際に三十石船を利用したとされていることから、丸紅にもゆかりのある作品である。この小袖は、丸紅ギャラリーのロゴデザインのモチーフになっている。

第2章 新たな技術との出会い
―コレクション蒐集前夜のきもの

染分縮緬地重陽模様着物
(そめわけちりめんじちょうようもようきもの)

1926年(大正15)
前期展示

五節句のひとつで、菊に長寿を願う重陽の節句をモチーフとした意匠の着物。一定の方向・間隔で模様が繰り返されており、型紙を用いた型友禅染の技法によることが分かる。型友禅には染料を含んだ刷毛で色を摺り込む摺友禅と、化学染料を混ぜた糊(色糊)を置いて蒸すことで色を定着させる写し友禅があり、本作品は後者にあたる。写し友禅は職工の技量の差が出にくく、効率的で均一な品質を保てる技法として広く普及した。

第3章 衣装と技術の探究-伝統に学ぶ

白麻地盆栽模様帷子
(しろあさじぼんさいもようかたびら)

江戸時代 19世紀前半
後期展示

上質な白麻布(上布)の地を卵色で松皮菱風に染め分け、引き染めによる藍の濃淡とわずかな刺繍のみで繊細な模様を表した茶屋染の帷子。一般に茶屋染として知られているのは武家女性が着用した風景模様を表した帷子であるが、町人女性の帷子にも茶屋染の技法を用いた例があり、それぞれの身分階層の好みを反映させたものとなっている。本作品は全体に盆栽(器物)を配しており、武家女性、町人女性の典型的な例とはいずれも異なっている。

白繻子縮緬地盆栽模様着物
(しろしゅすちりめんじぼんさいもようきもの)

上野為二
1933年(昭和8)
後期展示

京友禅の名工・上野為二がNo.27《白麻地盆栽模様帷子》の意匠を単衣きものに落とし込んだ作品。並べて見てみると、ほぼ隙間なくモチーフが敷き詰められたオリジナルと比して、幾分すっきりとした印象となっている。意匠をそのまま真似るのではなく、描かれたモチーフをひとつずつ取り出し、当代のきものに相応しくなるように再構成していることが分かる。この着物が制作された昭和初期は為二にとって修業時代であり、過去の様々な作品を研究・模写していたという。為二は1955年(昭和30)に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

第4章 新たな「美」を求めて

染分縮緬地異国風景模様振袖
(そめわけちりめんじいこくふうけいもようふりそで)

今尾和雄
1936年(昭和11)
後期展示

異国の風景が目を引く振袖。遠方にのぞくアルプスを思わせる山々は、当時流行したアルピン模様と呼ばれる模様様式の影響を受けている。アルピン模様の流行は、書物などを通じて海外の風物に関する情報を手に入れられるようになった一般の人々の、海外への憧れを反映したものであった。まるで油絵のようなタッチは、「液描」と呼ばれる技法で表されている。

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