展覧会

丸紅ギャラリー開館記念展Ⅰ

「日仏近代絵画の響き合い」会期:2021年11月1日(月)~2022年1月31日(月)
※展覧会は終了しました

企画趣旨

「日仏近代絵画の響き合い」と題する本展は丸紅ギャラリーのオープニングを飾る展覧会です。19世紀写実派のコローやクールベによる風景画から始まり、ルノワール、ルドン、デュフィ、ヴラマンク等に連なるフランス近代絵画の巨匠作品、彼らから多大の影響を受けた藤島武二、岡田三郎助、和田英作、川島理一郎、梅原龍三郎、安井曾太郎、小磯良平、荻須高徳ら19世紀末から20世紀にかけて活躍した日本の洋画家の作品を、従来の美術史の既成概念にとらわれず、丸紅コレクションにある彼らの作品の筆づかいや色づかいなどの作風をベースにした分類に基づいて展示することにより、近現代絵画における日仏の芸術交流や響き合いをレビューします。

主な作品

浜辺

藤島武二

1898年 油彩 板 24×33cm

藤島武二は鹿児島県出身。1884年に上京し川端玉章の下で日本画を学んだが、後に洋画に転向し、曾山幸彦、山本芳翠に師事した。1896年黒田清輝の推薦で東京美術学校助教授に就任するとともに、黒田らが創立した白馬会に参画する。1906年渡欧し、フランスで歴史画を得意とするフェルナン・コルモンに、イタリアで肖像画を得意とするカロリュス・デュランに師事した。1910年に帰国後、東京美術学校教授に就任。1937年に第1回文化勲章を受章。

本作は初期白馬会時代の作品で、近景に雑草の生えた砂浜を、中景に穏やかな海を、そして遠景に江の島を描き、色づかいも外光派の手法を顕著に示している。

沼のほとり

岡田三郎助

1919年 油絵 キャンバス 34×46cm

岡田三郎助は佐賀県出身。1887年曾山幸彦に弟子入りして画家を志し、1891年明治美術会会員となる。その後久米桂一郎を通じて黒田清輝を知り天真道場に入門した。1896年東京美術学校助教授に就任するとともに、黒田清輝が主宰する白馬会の創立会員となる。翌年フランスに留学し、黒田清輝の師ラファエル・コランの下で学んだ。1902年に帰国後、東京美術学校教授に就任、1912年には藤島武二とともに本郷絵画研究所を創立して、多くの後進を育てた。1937年に第1回文化勲章を受章。

沼のあるこの風景画は、朝の清涼な光を受けた色調と、木の幹や遠景に使われている紫の高雅な情緒性に、外光派の師ラファエル・コランの影響がみられる。

ヴィル=ダヴレーのあずまや

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー

1847年 油彩・キャンバス 150×110cm

コローはパリに生まれ、パリ近郊のヴィル=ダヴレーで没した。1822年からアシル=エトナ・ミシャロンに師事し、古典的・歴史的風景画の基礎を学んだ。また師の教えに従い、直接自然に即した風景画を描くため、フォンテヌブローの森へ足しげく写生に出かけた。また、イタリアにも何度も旅行し、ローマやその周辺の古典的で知的な雰囲気に感銘した作品を多く描いた。こうした背景からコローは写実的な風景画だけでなく、古典的な風景画や抒情的な風景画など、ヴァラエティに富む画風を示した。特にサロンに《朝、妖精たちの踊り》を出品した1850年頃からは詩的で抒情的な風景画を描くようになった。

1847年の夏、体調のすぐれない父親に付き添うため、コローはヴィル=ダヴレーの実家に長く滞在した。その間、彼は庭の小さなあずまやの壁を飾る6点からなる一連の風景画を制作した。これはそのシリーズの1点で、母親の誕生日の贈り物として描かれた。絵にはコローの家族が描かれている。前景の帽子をかぶり、陽光を背にして新聞を読んでいるのは彼の父、右手奥の橋の手すりにもたれている2人の女性は母と姉と思われる。コロー自身も画帳をかかえて写生から戻ってきた姿として描かれている。また、画面中央、あずまやの前の小径には姉婿のセヌゴン氏がいて、コローを出迎えようとしている。

エスタックのオリーブ畑

ピエール=オーギュスト・ルノワール

1882年 油彩 キャンバス 37×66cm

ルノワールはフランス中央部リモージュに生まれた。13歳から製陶工場の見習い絵付師として働く。その後パリのグレールのアトリエやエコール・デ・ボザールに入り、モネ、シスレーらと親しくなる。初期にはドラクロワやクールベの影響を受けた。1864年のサロンに出品し入選する。印象主義の創始者の一人として第1回から第3回の「印象派」展に《桟敷席》(1874年)や《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》(1876年)などの力作を出品した。1882年1月末、アルジェリア、イタリア旅行からの帰路、南仏マルセイユ近郊のエスタックに立ち寄り海に面したホテルに逗留した。また同地では尊敬する画家セザンヌに会うこともできた。

本作に見られる海原や草むらの平行な斜めの筆づかいはセザンヌの描法を反映したものと思われる。オリーブ畑に降り注ぐ陽光は、木の葉や草むらに心地よく吸い込まれ、あふれた光が大気中に飛び交っている。季節は冬であるが、春のような気配がある。ルノワール自身、画商デュラン=リュエルに「風のない穏やかな日差しの春。こういうことはマルセイユではめったにないことです」と感動を書き送っている。1937年ニューヨーク・メトロポリタン美術館で開催された展覧会出品作。

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