企画展

企画展

格式の美-丸紅コレクションの能装束-会期:2024年9月25日(水)~10月26日(土)

開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:日曜日、祝日、年末年始、展示替え期間
主催:丸紅ギャラリー

企画趣旨

室町時代に世阿弥によって大成された能楽は、桃山時代に戦国武将を中心に愛好され、江戸時代には武家の式楽として大名らによって嗜まれた長い歴史を持つ我が国の伝統芸能です。丸紅の染織コレクションは、丸紅の前身である丸紅商店時代に発足した「名品會」によって呉服制作の研究資料として大正時代末期から昭和時代初期にかけて染織作品の蒐集がなされ、その極初期に購入されたものが能装束でした。名品會は、日本の染織技術の粋が集められた衣装として能装束に注目し、江戸時代から明治時代の作品まで幅広く蒐集して古来の技術や意匠を呉服制作販売のために活かそうとしました。
本展では、先人たちが選りすぐった江戸時代から明治時代の能装束の優品を紹介し、能装束に秘められた格調高い日本の美意識を紹介します。

作品紹介

紅白縹段流水扇模様縫箔

(こうはく はなだ だん りゅうすい おうぎ もよう すりはく)

江戸時代・18世紀後半~19世紀前半
伊達家伝来

能装束の縫箔は、模様を表す技法として「縫」(刺繍)と「箔」(型紙を用いて糊を置き、金銀の箔を貼付けて模様を表わす摺箔の技法)が用いられていることからこのように呼ばれる。この作品も、繻子地を紅・白・縹に染め分け、金の摺箔で流水を地文風に表し、さらに扇の外形を刺繍でかたどった後、地紙部分にさらに金箔を施して金地とし、そこに刺繍で様々な植物を縫い表している。

紅白縹段流水扇模様縫箔

紫地花籠蝶模様長絹

(むらさきじ はなかご ちょう もよう ちょうけん)

大正時代・20世紀前半

紫の絽の地組織に金糸と色糸の絵緯を加えて、藤の花籠と蝶を表している。藤の花で満たした花籠は、長絹では五つ紋の位置に配するものがしばしば見られ、また袖下部と裾に蝶を散らす模様も見られる。この作品は、江戸時代に制作された作品を参考に近代になって制作されたものである。

紫地花籠蝶模様長絹

鼠薄茶段蒲公英模様厚板

(ねずみ うすちゃ だん たんぽぽ もよう あついた)

明治時代・19世紀後半

経糸を数色に染め分け、緯糸の色をそれぞれの色に合わせて織り込み地色を変えることを「締め切り」(しめきり)と呼ぶが、この作品にもその技法が用いられている。前後左右の身頃で地色の配列を合わせれば「横段」(よこだん)、ずらせば「段替り」(だんがわり)と呼ばれる意匠になる。作品の名称に「〇〇段」とあるのは、地色が後者の「段替り」の構成になっていることを示している。

鼠薄茶段蒲公英模様厚板

今後の企画展のお知らせ:
八幡垣睦子―古裂のメタモルフォーゼ
(2024年11月26日~12月21日)