企画展

企画展

八幡垣睦子—古裂のメタモルフォーゼ会期:11月26日(火)~12月21日(土)

開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:日曜日、祝日、年末年始、展示替え期間
主催:丸紅ギャラリー
共催:出雲キルト美術館

企画趣旨

八幡垣睦子は、欧米の伝統的なキルト技法を土台としながらも、日本の素材である江戸時代から昭和時代の古い染織品の小裂を、入念な構想のもとに、多い場合には数千枚も縫い合わせて花鳥風月など日本の伝統的モチーフを独自の感性で再現し、芸術性の高い作品に蘇らせています。
「後世へ伝承する一助になりたい」という八幡垣のことば通り、染織品の古裂が別の芸術品へと変容(メタモルフォーゼ)した彼女の作品には、古裂が既に内包する物語が継承されるとともに、作家の新たな思いも込められています。私たちはそれぞれの作品から、当ギャラリーのコンセプトに通ずる「古今の美意識が響きあう」複層的な物語に思いを馳せることができます。
八幡垣の創作活動は1990年頃から始まり、これまでに制作した作品は350点にのぼります。そのうち、本展では、大作を中心に、初期作品から最新作まで、彼女の多様なキルト芸術をご鑑賞いただきます。

作品紹介

《鳳凰》

2023年 出雲キルト美術館蔵

江戸時代の絵師である伊藤若冲の作品にインスパイアされた作家が若冲の描いた鳳凰の羽根の先までを夢の中で想像し、その力強い形や広がりを具現化した作品。

鳳凰の身体に用いられた数百枚の綸子の裂が光の屈折により輝き方を変え、神々しくもあり、嫋やかな羽毛を表現しています。また、尾羽根に透け感のある絽の裂を用いることで軽やかかつ優雅さも生まれます。

主となる鳳凰を際立たせるために、全体の地となる裂には明治時代の裾模様の着物を大胆に配置しています。数十種類もの裂から生まれた生命力あふれる作品には、コロナ禍や戦争、めまぐるしく変化する日々の中で生まれた祈りが込められています。

《鳳凰》2023年 出雲キルト美術館蔵

《綺羅の華》

2008年 出雲キルト美術館蔵

ご縁があり譲り受けた大正天皇の白襦袢を菊の花びらの一部に用いた作品。

日本の象徴である菊の白い花びら一枚一枚に込めた格別な想いは、ひとつの花に200枚以上の花びらに見立てた裂を縫い合わせ大輪の白菊を表現しています。

全体をまとめる額縁としての役割を担った黒地の裂には、明治時代の帯が用いられています。帯地にも菊が織り表されており、作家の菊への想いやこだわりを感じさせる作品です。

《綺羅の華》2008年 出雲キルト美術館蔵

《艶紅》

2000年 出雲キルト美術館蔵

幾何学模様を基本としたシンプルな構成にすることで色のコントラストを楽しみ立体感を感じさせる作品。

160.0×280.0㎝にも及ぶ絵画のような作品の主となる裂には、モスリン地の華やかな襦袢の裂を用いています。赤やオレンジなどの大胆な模様の襦袢を着物の下に身に着けることで、自身だけが感じる高揚感があったのではないかと想像し、その心躍る気持ちを感じとり作品として表現しています。

《艶紅》2000年 出雲キルト美術館蔵

今後の企画展のお知らせ:
美術館の春まつり『ボッティチェリ 美しきシモネッタ』特別公開展(2025年3月18日~5月24日)

過去の企画展