顧客価値と向き合うことで生まれた「おまかせEV for Biz」
配車・充電マネジメントで法人のEV導入を親身に支援
CHECK POINT
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EV導入に悩む自治体・企業をサポートする「おまかせEV for Biz」
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配車最適化で環境負荷もストレスも低減するEV利用を実現
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技術ドリブンより課題ドリブンの姿勢が生む迅速なサービス改善
環境負荷低減に取り組む企業を支えるEVサービス
異常気象の増加をはじめとする気候変動へ対応すべく、あらゆる企業や自治体において環境負荷低減のための取り組みが求められている。ガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトもそんな取り組みのひとつだろう。個人レベルでのEVシフトも進んではいるものの、法人が業務用の車両をEVへと切り替えるケースが近年増えてきている。
ただし、いざEVの活用を進めようとしたとしても、そこにはさまざまなハードルがある。法人の場合は複数台の車両を導入するケースが多いため、たとえばバッテリー容量や残量に左右される航続可能距離の観点からどの車両を選ぶのがいいかわからなかったり、充電のマネジメントが難しかったり、充電できる場所が限られているがゆえにガソリン車では起きないトラブルが発生してしまうのだ。
さまざまな領域でモビリティに関わってきた丸紅も、企業のEV導入が進んでいくなかで、悩みを相談される機会が増えていた。2021年にスタートした法人向け車両予約管理サービス「おまかせEV for Biz」(以下、おまかせEV)は、まさにこうした悩みと向き合うなかから生まれたものだ。
本サービスは、EVを含む業務用車両を保有する法人を対象に、丸紅が自社開発したアルゴリズムを活用し、各車両のバッテリー残量や燃費(電費)を考慮した配車の最適化を実現。バッテリー残量の不安なくEVを利用できるだけでなく、ガソリン車とのバランスも考慮し、燃料費(充電料金)を最小化した配車を提供している。結果的にEVの利用頻度を増やし、CO2の削減にもつなげることができる。さらに、EVの新規導入を検討する企業には、過去の車両利用実績を分析し、航続距離ごとに最適なEV台数を提案する「EV導入効果算定サービス」を同時に展開中だ。
実証を重ねユーザ価値優先で機能をアップデート
グループ企業のEV導入への課題解決から検討が始まったおまかせEVは、まず丸紅デジタル・イノベーション室(現デジタル・イノベーション部)が課題に対してプロトタイピングを行いながらサービスを形にしていったという。実証段階に達してからは長野県や群馬県など全国各地で実証実験を繰り返して、サービスを磨き込んでいった。
なかでも2023年に長野県松本合同庁舎で行われた実証実験には、高精度な充電制御システムを提供するパナソニックも参加。EVの予約時に入力された目的地から走行予定距離を把握し、ほかの予約状況と車両のバッテリー残量に応じた最適な配車を行うとともに、充電器の接続状況をタイムリーに確認しアラートを出すことで、確実な充電をサポートするために実証実験が進んでいった。
実際に実証を繰り返すなかでは、新たな課題が見つかることも多かったという。たとえばEVの利用に不安を抱えている人々もまだ多いため、メーター上では十分な充電があったとしても、フル充電されていなければEV利用が広がりづらいなど、実証を行うからこそ見えてきた課題や予期せぬトラブルへ対応するために、サービスの根幹となる充電制御はもちろんのこと、UIの設計を通じてユーザの動きを誘導するなど、さまざまな改善が進んでいった。
あるいは、当初は最適な配車方法を厳密に計算することを重視していたものの、実際にユーザに使ってもらうなかではむしろ精度よりも速度を優先した方がユーザ価値は高いことが発覚するなど、細かなアルゴリズムの面においても調整が重ねられていったという。2021年に立ち上がったこのサービスは2024年4月から本格的な商用化が始動し、今後はさまざまな自治体や企業へ展開予定だ。
商社だからこそ技術ではなく課題ドリブン
おまかせEVは独自アルゴリズムやデータ分析、充電制御などIoT・デジタル・テクノロジーの活用なしに実現しなかったものだが、技術ドリブンではなく課題ドリブンでアップデートが行われている点が特徴と言える。ITベンダーではない丸紅にとって一番重要なのは、あくまでも顧客価値だ。長年にわたって企業や自治体とのネットワークを築き上げてきた営業チームが日々顧客からダイレクトなニーズを吸い上げ、すぐに社内のエンジニアチームと共有することで迅速なサービスのアップデートが実現している。
そのため、今後もおまかせEVはEVの導入・運用に悩みを抱えている顧客と向き合いながら、サービスをアップデートしつづける予定だ。まずは充電制御機能を拡充し誰もが航続距離の心配をせずにEVを利用できる環境を実現するとともに、今後は充電器だけでなくEVそのものから得られるデータも活用しながら、より多面的なサービス展開も検討されている。
同時に、丸紅が発電事業や電力の小売事業で培ってきた経験から、ただ顧客の利便性を高めるだけでなく、将来的には全国に広がったEVの充電をマネジメントすることで、EVの普及によって高まってしまう電力インフラへの負荷を下げていくような仕組みの実現も目指されている。第一に目の前の顧客にとっての価値を考え、さらにはEV単体ではなく電力インフラも含めたエコシステム全体の環境負荷を考えていく──さまざまな領域・観点からモビリティや電力に関わってきた丸紅だからこそ実現したEVサービスがおまかせEVなのかもしれない。