森林経営方針
1. はじめに
丸紅グループ(以下、当社)は、社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動の一環として、持続可能な森林経営を推進しています。森林は地球上の生命に様々な恩恵をもたらす再生可能な資源であり、当社は、現在と将来の世代の繁栄を目指し、経済的に実行可能な森林経営手法を取り入れています。
また、森林資源の活用にイノベーションを起こし、多様化する社会の環境ニーズに応えることで、循環型経済の構築に貢献していくことを目指します。
この森林経営方針(以下、本方針)は、当社の事業活動における持続可能な森林経営と保護価値が高い森林(以下、HCV※1)の保全を推進し、無秩序な森林伐採に歯止めをかけるための取り組みを約束するものです。現場を重視し、地域社会との共存共栄による持続可能な森林経営をおこない、社会の要望に応える環境配慮型の木質資源を社会に供給していくことで、森林経営を通じた社会貢献と事業収益の確保の両輪を実現します。
2. 適用範囲
本方針は、丸紅の自社または子会社による全世界の植林事業、チップ・パルプ生産事業に適用します。
3. コミットメント
当社は、法令遵守にとどまらず、持続可能な森林経営に取り組んでいます。本方針を通じて、森林事業に適用されるすべての法令を遵守するというコミットメントを再確認し、請負業者およびその従業員にそれらを遵守することを求めます。
(1)自然資本
当社は持続可能な森林経営の実施にあたり、森林破壊ゼロの理念のもと、下記の取り組みを行います。
- 木質資源については、持続可能で適正に管理されたもののみを取り扱います。
- 植林事業開発において、天然林からの転換は行いません。
- 森林経営においては、生物多様性保護の観点から、HCV森林の保全に積極的に取り組みます。
- HCV森林および泥炭地において植林事業活動を行いません。
- 熱帯雨林地域の植林において、森林火災の原因となるような火を使った作業を行わないNo Burnポリシーを遵守します。
- 森林伐採およびそれに関わる林道工事による生態系への影響の低減に取り組みます。
- 国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)が発行しているレッドリストに記載されている絶滅のおそれのある生物種の保護に取り組みます。
- 外来種の取り扱いは、それによって発生する影響を管理可能な場合に限定します。
- 土壌管理は、国際的なベストプラクティスに従って実施します。
- 世界保健機関(WHO)の分類でクラス1Aまたはクラス1Bに分類されている農薬、ストックホルム条約およびロッテルダム条約による規制対象物質を農薬として使用しません。
- 森林経営において、遺伝子組み換え技術を使用しません。
- 自然災害などによりダメージを受けた焼損木、倒木、流木などを有効活用します。
(2)社会・関係資本
当社は、事業を実施する地域の社会・経済の発展に努めるとともに、地域社会と共に共有価値の創造に尽力します。当社は、地域住民と先住民族の土地使用権、森林資源の商業利用が生み出す利益を公平に享受する彼らの権利の重要性を認識しています。「丸紅グループ人権基本方針」に掲げる人権に対する基本的な考え方に則り、責任ある当事者として以下のような活動を行います。
- 安全で生産的な職場環境の提供に努め、児童労働、強制労働、差別、ハラスメント、虐待を許しません。
- 地域住民および先住民族の法律上認められた権利および慣習的な権利が認められた土地において、新規事業を開始する場合は、「自由で事前の十分な情報に基づいた同意」(FPIC: Free, Prior and Informed Consent)をもとに進めていきます。
- 森林事業の実施国の規制および国際基準に基づいて、苦情処理・対立解決のメカニズムを確立し、ステークホルダーと誠意を持って問題解決に向けた対話を行います。
- 地域・国・国際レベルにおける積極的なステークホルダー・エンゲージメントを実施します。
- すべての労働者の権利を尊重します。
当社は、次のような取り組みにより、地域の経済・社会の発展を促進しています。
- 地域住民の雇用創出
(植林事業における植林事業関係請負業務の優先的な配分など)
- 地域住民との共同プログラム
(共同植林・農産物栽培・林産物収穫プログラムなど)
- 地域住民への支援活動
(先住民支援、職業訓練、防災訓練、生活用品無償支給など)
- 教育支援(奨学金、学校建設・増築・改修、教師派遣、運営支援など)
- その他、地域支援(インフラ設備修繕補助、スポーツイベント支援など)
(3)国際基準に対する考え方
当社は、持続可能な森林経営に向けたコミットメントの一環として、森林事業(植林事業およびチップ・パルプ生産事業)に関する国際基準に盛り込まれた主な原則に則り、当社の事業活動を推進します。
(4)環境・社会リスク評価
当社は、新規事業における土地取得または土地開発が完了する前に、必要な環境・社会リスク評価を実施します。
4. ガバナンス等
(1)実施体制
本方針は、丸紅の取締役会において決定しました。
本方針は、丸紅のサステナビリティ推進委員会委員長が所管し、営業グループが本方針に従って実施します。
(2)他方針との関係
本方針は、当社の他のサステナビリティ関連方針を補完するものです。これには、「丸紅グループ人権基本方針」、「サプライチェーンにおけるサステナビリティ基本方針」が含まれます。
(3)本方針の管理
当社は、本方針について、少なくとも年1回見直し、必要に応じて、持続可能な森林経営の目的達成のために改定します。
(4)認証監査・モニタリング
当社は、持続可能な森林経営に関する国際的な森林認証を取得し、流通加工に関わる管理認証(CoC認証)を取得しています。そのため、定期的に同認証による監査・モニタリングを実施しています。
(5)情報開示
当社は、持続可能な森林経営に向けた取り組みについて、事業活動の透明性を高めるとともに、当社ホームページなどで持続可能な森林経営手法に関する情報開示を行います。
1 HCV森林:社会的、文化的、環境的に高い保護価値のある森林
以上