Scope#17 | Boric Acid Trading (BOR)

スマートフォンとロシアの街を支える、丸紅のホウ酸トレードビジネス

  • ダリネゴルスク
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ロシア極東地域沿岸の街、ダリネゴルスクは人口約4万人、UFOの目撃と希少な蝶の生息地として知られるこの趣のある街は、すぐに見渡せてしまうほどの大きさだ。
その小さな街を支える一大産業がホウ酸製造だ。ホウ酸は光ファイバー、携帯電話、テレビのLCDスクリーンなど、我々の身近な精密機器製品を生産する上で欠かせない素材だが、その産地はトルコ、アメリカ、チリ、そしてロシアと、世界で4カ国に限られている。

  • ドミートリー・ラチコフ社長
  • ホウ酸
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「ロシアでのホウ酸の産地はダリネゴルスクのみで、我々『BOR』がその唯一の生産者です。」丸紅が40年超にわたりホウ酸トレードでパートナーシップを組んでいる、BOR社のドミートリー・ラチコフ社長は語る。
BORは自社鉱山から高品質の鉱石を採掘し、ホウ酸を製造。丸紅はそのホウ酸を引き取り、精密機器製品の一大生産地である日本をはじめとするアジア諸国に輸出している。
出荷は日本海沿岸に位置するBOR専用の積出港からだ。このロケーションは日本への輸出や他のAPEC地域への入り口といった物流の観点から、丸紅にとって理想的なものと言える。
バトンを受けた丸紅は、製品のデリバリーと在庫管理を一手に引き受け、顧客に向けて短納期で確実に製品を届ける。
このプロセス全体を見てみると、丸紅とBORは1つのプロフェッショナルなチームであることがわかる。「丸紅は世界でも限られた高品質なホウ酸をBORから得て、BORは自社の製品を一番ハイテクな市場である日本に入っていくことが出来ている。WIN-WINの関係です。」ラチコフ氏は両社の互恵的な関係を強調する。

製造のプロセス

製造のプロセスは美しい結晶石、ダトライトの採掘から始まる。製造責任者のグラス氏に採掘場を案内してもらった。

「ここが、私たちがダトライトの採掘を行っているザパドナヤという鉱区です。緑色に見えているのがダトライトの成分で、これが生成されてホウ酸になります。」

この地から採掘された鉱石はトラックで選鉱工場へと運ばれる。BORはダトライトからホウ酸を製造する為の技術を独自開発している。「ホウ酸の製造方法は採掘されるダトライトのミネラルや科学的な組成で異なってきます。我々の技術はここで採掘される鉱石に特化した独自で唯一のものなのです。」

ラチコフ氏は続ける。「この技術はホウ酸製造を開始した1964年以来、常に改良が重ねられています。ホウ酸製造における世界のトレンドを追いかけながら、自分達に最適なものを工場の各作業ユニットや研究所の社員が常に追求しています。」

独自の製造技術

この独自の製造技術を使い、BORは年間およそ10万トンのホウ酸を生産している。中でも高レベルの品質を保つ使命をもっている同社の研究所は、この生産サイクルの中で重要な位置を占めるだろう。研究所主任のボヤシェバさんは「この研究所では鉱石を粉末状にして液体に攪拌した段階(スラリー)のものから出荷前の最終製品まで、ホウ酸の生成プロセスを全てコントロールしています。」と話す。

ホウ酸製造についての話はここで終わりになるが、ラチコフ氏にとって、このパートナーシップによりもたらされるもう一つの重要な視点は、ダリネゴルスクの人々なのだと言う。

「この協力関係は企業間だけでなく、ダリネゴルスクの街全体にとっても利益となっていることを強く実感します。BORでは現在約2500人が従業員として働いており、その家族も含めると7500人になります。私自身、この街で生まれ、人生の大半をここで過ごしてきました。これが、丸紅とのパートナーシップが私たちにとって非常に重要であると言う理由なのです。」

ダリネゴルスク

BORと丸紅がいなければ、ダリネゴルスクは現在とは全く違うものになっていただろう。多くの従業員との対話を通じて見えてきたのは、彼らの仕事はホウ酸を製造することであるのは明白だが、一人一人の日々の活動のモチベーションとなっているものは、ダルネゴルスクの人々の長期的な健康と成功であることだった。「丸紅との協力関係は40年間も続いているが、少なくとも、もう40年は続いて欲しいね。」ラチコフ氏の顔に笑みがこぼれた。

「丸紅が今後も力強く成長し続けていくことを期待しています。それは同時に我々の発展を意味するからです。」

増加の一途をたどるハイテク機器に対する需要を考えると、これらの機器を生産する世界中の製造会社にとって、BOR製のホウ酸は必須の原材料であり続ける。BORと丸紅の相互利益パートナーシップは今後も深化、発展していくだろう。

(本文は、2017年9月の取材をもとに作成しています)