

多角化する商社ビジネスのマーケティング
デジタルを活用しあらゆる角度から経営課題を解決
CHECK POINT
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マーケティング視点をビジネスへインストール
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デジタルのみならずあらゆる施策を展開
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事業に寄り添い二人三脚で経営課題を解決
マーケティング視点から事業課題を整理
──小林さんは現在デジタル・イノベーション部で主にマーケティングを担当されていますが、新卒で入社されたころはべつの領域に携わられていたそうですね。
小林礼奈(以下、小林) デジタル・イノベーション部は比較的新しい部署なので、私に限らずさまざまなバックグラウンドをもつメンバーが集まっています。私自身は、もともと途上国の発展に貢献したいと思って丸紅に入社し、現地に根ざしたビジネスを展開するために電力本部で東アジア〜東南アジアの発電所の建設や運営プロジェクトへ携わっていました。
その後休職中にニューヨークへ拠点を移した際にデジタル・マーケティングに出会い、大学院で学び、帰国後にデジタル・イノベーション部(当時はデジタル・イノベーション室)へと異動しました。発電所の建設とデジタル・マーケティングは一見真逆の事業に思えるかもしれませんが、マーケティング的な思考は電力事業に限らずさまざまな領域に展開できるものでもあるため、今後はマーケティングで丸紅の成長に貢献したいと思ったんです。
──マーケティング領域においてはどんなプロジェクトに携わられてきたのでしょうか。
小林 私自身は食品のブランディング戦略策定や不動産売買の事業設計、EC事業のUX改善など、BtoBからBtoCまでいくつものプロジェクトに携わってきました。
こうした事業領域の広さは丸紅の強みであり魅力でもあると感じますね。BtoB/BtoCを問わずさまざまな業態の事業を手掛けていますから、マーケティングにおいても幅広い領域に携わることになります。デジタル・イノベーション部のなかでマーケティングを担当しているのは2〜3割のメンバーなのですが、それぞれ得意な領域も異なりますし、人それぞれさまざまなプロジェクトに携わっています。
私たちの関わり方は、プロジェクトや課題によってさまざまです。ときにはウェブサイトの活用方法のように細かな施策を担当するなど“点”の技術的な解決を担当することもありますし、マーケティング戦略全体のように“面”から課題に取り組むこともあります。ただ、近年は個別の施策だけにフォーカスするのではなく、背景にある事業課題を整理して全体の戦略を事業責任者と一緒に考えていくケースが増えていますね。
画像:小林礼奈
デジタル/アナログを問わずあらゆる施策を実践
──丸紅という総合商社のなかでマーケティングを展開する強みや面白みはどんなところにあると思われますか?
小林 デジタル・イノベーション部は、業界や部署の垣根を超えて社内のありとあらゆる相談が集まってくる場所なんです。営業部の方々はそれぞれの産業領域のプロフェッショナルですが、私たちはさまざまな事業と自分の専門知識を掛け合わせてソリューションを考えていく。そのダイナミズムが醍醐味だと思いますし、強みにもなっていると感じます。
もちろん各事業部の方々は長年その分野の知識やノウハウを積み重ねてきたプロフェッショナルなので、私たちのもつデジタルの知見を提供することで一緒に新たな事業を創出したり課題解決に取り組んだりすることがやりがいにもつながっています。
──今後もさまざまな事業部のプロジェクトでマーケティングを担当される機会が増えそうですね。
小林 商社の事業を発展させていくうえで、事業の立ち上げから成長、時には撤退に至るまで、あらゆるフェーズでマーケティングの視点が今後ますます重要になっていくと考えています。デジタル施策はもちろんのこと、オフライン営業の仕組み化など手段を問わずマーケティングの視点から事業を見ることでビジネス上のインパクトも大きくなっていくのかな、と。
今後はさらに踏み込んで、事業部の経営そのものに参画しながら、二人三脚でビジネスの難局を超えていけるといいですね。デジタル・イノベーション部が丸紅に変革を起こす原動力となったらいいなと思っています。
マーケティング領域の多様化が加速
──デジタル・テクノロジー活用の観点で今後注力していきたい領域はありますか?
小林 個人的にはもともと途上国の支援や環境問題に関心があったこともあり、デジタル・テクノロジーを活用しながら持続可能な社会につながるような取り組みにチャレンジできたらと考えています。部署としては昨年7月にLLM(大規模言語モデル)を活用したチャットボット「Marubeni Chatbot」が社内でリリースされたこともあり、日々生成AIをフル活用しながらマーケティング業務の効率化に取り組んでいますね。
同時に、私だけが活用するのではなく社内にこうしたツールを広めていく必要もあると感じています。チャットボットの開発をきっかけに社内で生成AI活用の研修やセミナーを行う機会も増えていますし、全社のデジタルリテラシーを高めていくこともデジタル・イノベーション部の重要な責務ですから。
営業部の方々がもっている課題意識とマーケティング視点の課題意識、両方をかけ合わせて本質的な課題を解決していける関係性をつくっていく必要があります。
──とくにマーケティングの領域においては、今後デジタルか否かを問わず取り組みの幅が広がっていきそうですね。
小林 デジタル・マーケティングやAI活用などさまざまなデジタル施策への対応はもちろんのこと、事業の本質的な課題解決に対しても提案を行うだけの知見やスキルが溜まってきているため、部署としての発信も強化していくつもりです。
私たちの業務領域は、どんどん広がっていくと思っています。
とくに丸紅の事業はサプライチェーン全体に関わっていますし、資本的な取り組みも多様だからこそ、新たなビジネスチャンスも生まれやすいんです。さまざまなビジネスのつながりが、業務の幅も広げていく。総合商社だからこそ手掛けられるビジネスがあるのだなと実感しています。
同じ部署で働く江原さんのようにCMOとして子会社に出向するケースも出てきていますし、業界の幅広さだけでなく、関わり方もかなり多様化しているんです。プロジェクトの規模の大小を問わず、デジタル・テクノロジーの活用はもちろんのこと、今後はさらにさまざまな事業の本質的な課題解決に部署として取り組んでいけたらと思います。